――ちょっと驚かせて面白い反応でもしてくれりゃ、それで終わりだったんだがな。


だが、結果はというと。
押し倒されてすっかり弱気になったアリアから醸し出された、妙な色気というか。
仕事中には絶対にみせない、そんなしおらしい様子の中に混在する妖艶な雰囲気に、この俺が一瞬でヤラれちまった。
気が付けば、アリアを抱き上げ、問答無用にベッドルームへと直行だ。
そこに理性のブレーキなんてものが効く隙など、あるハズもない。


そして、ベッドの上でも、アリアは俺の理性をことごとく崩していった。
強い抵抗を示すでもなく、だからといって、遊び慣れた女のようにすんなり身を任せるワケでもなく。
俺の身体を力なく押し返してみたり、小声でボソリと「止めて。」と告げてみたり。
羞恥に顔を赤く染めて身体を隠そうとしてみたり、喉の奥から漏れる悦びの声を押し殺そうとしてみたり。
所々にみせる躊躇いと、どこか初々しさが混じる恥じらい。


それでも、本気で嫌がる仕草はこれっぽっちも見せず、頑なに拒んだりはしない。
それをされていたならば、俺の熱は一気にクールダウンしていただろうが、反応する時には敏感に反応し、俺の施す行為を邪魔したりはしない。
時に高い声を上げ、時に熱の籠もった息を吐き。
そう、アリアのみせる反応の全てが、余計に俺を煽ってくるばかりだった。
勿論、本人はそうと全く気付いてなかったんだろうがな。


「ふ……、ん。あ、あぁ……。」


奥深くまで沈んだアリアの身体の熱さに、俺の全身が震えた。
じんわりと柔らかく俺を受け止め、それでいてグッと強く離さないアリアの体内。
一つになっただけだというのに、ココまで深い歓喜を感じたのは初めてだった。


「んっんっ……。あ、や、ん……。デス、さまぁ……、あっ。」


耳元に繰り返される、堪えようとしても堪えられない微かな喘ぎ声。
切なくて、それでいて甘さの混じる声。
その声を至近距離で捉える耳から、嘘のように快感がジワジワと広がっていく不思議な感覚が俺を支配する。


声までも控えめに、だからといって感じていないワケじゃなくて。
途切れ途切れに吐き出される熱の籠もった息に呼応して、俺の全身も昂ぶる悦びに粟立っていく。
どこまでも自分色に染めてしまいたくなるような初々しさと、アリア自身も知らず知らずの内にみせている誘う女の仕草。
その二つが絶妙に折り重なってアリアの上に現れ、彼女を組み敷く俺をひたすら夢中にさせる。


――コレが、『溺れる』という事か……。


そう思ったのは、ホンの一瞬だけで、後は本能のままに突っ走った。
動けば動く程、俺はアリアを乱し、乱されたアリアに、更に俺が溺れる。
ベッドが軋む音すら耳に届かず、今、この世に存在する音は、アリアの唇から零れ落ちる俺の名前だけ。
羞恥と奔放さの間で抑制された控えめな嬌声の合間に繰り返される、必死に俺を呼ぶ声。


「は、あ……。デス、様ぁ……。あっ、あぁ……。」


力なく腰に回されていた両手をそっと外し、首に回すよう誘(イザナ)う。
ハッとして目を見開いたアリアをキスで捉え、同時にしなやかな足を抱え上げた。
より深く一つに、より深い快楽を共に。
考える事すら放棄した俺は、頭がおかしくなるくらいの快感に落ちてしまいそうになるのをギリギリのところで堪え、アリアの中を、夜の海を泳ぎ続けた。


この時、俺達は二人共に、気が狂っていたのかもしれない。





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