それから暫く後。
こちらもスッカリ毛糸玉遊びに飽きてしまったらしいアイオリア様を、もう片方の腕に抱いた私は、すっかり両手に猫ちゃんを満喫していた。
しかも、お風呂に入ってふわっふわの艶々になったお二人の抱き心地は、うっとりしてしまうくらいに触り心地が良く、正直、もうずっと離したくないとすら思える。


「ああ、そうだ。すっかり忘れてたが……。」
「はい? 何ですか、デスマスク様。」
「このまま朝まで持つとは思えねぇからな。取り敢えず、アッチに用意しといた。」


彼が顎でしゃくった方向を見れば、靴置き用のプラスチックトレー。
その上にある、これは……、ペットシート?
それが敷き詰められていた。


「これ、トイレですか?」
「犬ならソレで問題ねぇんだがな。猫はペットシートって訳にはいかねぇだろ。だが、この時間じゃ店も開いてねぇし、ま、明日の朝まではコレで我慢してもらうしかねぇってこった。」
「このペットシートは何処で?」
「アルデバランのトコで貰ってきた。昔、捨てられてた仔犬を引き取って世話してた事があったから、もしやと思ってな。」


その仔犬、確か聖域内の市場のおばさんが引き取ったのでしたっけ。
それまでアルデバラン様が健気にお世話していたわよね。
女官の子達が、その仔犬を目当てに、頻繁に金牛宮に出入りしていた記憶があるわ。


「明日になりゃトイレの砂くらい買ってきてやるから、今晩はコレで我慢しろ。分かったか、オマエ等?」
「ミャッ。」
「ミッ。」


デスマスク様は凄んだ表情をして、シュラ様とアイオリア様の狭い額を、二匹同時に人差し指でコツンと小突いた。
了解の返事なのか、それとも反発の声なのか。
二匹の猫ちゃんは、私の腕の中からデスマスク様に向かってミャーミャーと鳴き声を上げている。


「ギャーギャー煩ぇよ、オマエ等。俺は、もう寝る。オマエ等も、とっとと寝ろよ。あ、客間、借りるからな。」
「はい、どうぞお好きに使ってください。」
「そうさせてもらう。じゃな、バカ猫共。アンヌに迷惑掛けンじゃねぇぞ。」
「ミャー!」


ニヤリと笑って、軽く手を上げた後、デスマスク様は廊下へと姿を消した。
リビングには、ポツンと取り残された私と、腕の中でゴロゴロと擦り寄ってくる猫ちゃん二匹。
このまま、もう暫くは彼等と戯れていても良いのだけど……。


「特にする事もないですし、私達も寝ましょうか? 今日は色々と疲れましたしね。」
「ミャッ。」
「ミィッ。」


時間的には、まだ少し早いけれど、シュラ様とアイオリア様のお陰で、身体はクタクタだった。
勿論、精神的にも。
まぁ、それでも彼等の愛らしさに癒されている部分も多いのだけれど。


「それじゃ、もう休みましょうね。」
「ミャー。」


彼等を腕の中から離して床に下ろせば、我先にと争うように廊下へ向かって走り出す、シュラ様とアイオリア様。
リビングの中を軽く整え、部屋の電気を消すと、そんなお二人を追って、私も廊下へと向かった。
シュラ様の、というか、彼と私が使っている寝室の前。
そこに、ちょこんと並んで座り、ミャーミャーと鳴きながらドアが開けられるのを待っている猫ちゃん達の姿は、何だかとても微笑ましかった。





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