何でしょう、この苛立ちは?
先程まで私に縋り付いていた猫ちゃん二匹は、コロコロと転がる毛糸の玉にスッカリ夢中な様子だし。
猫になんか、まるで興味ない振りしていたデスマスク様は、大層、熱心に二匹を構って遊んでいる。
何ですか、この疎外感。


「随分と仲がよろしいのですね?」
「どわっ?! っと、ンだよ、アンヌ。随分と早ぇじゃねぇか。」


思わずボソリと呟けば、その言葉に籠められた怒りの気配に気付いてか、こちらに背を向けて床に座っていたデスマスク様が、ビクリと反応して振り返った。
しかし、依然、シュラ様達は毛糸玉に夢中でじゃれ付いていて、私の事など眼中にない。


「デスマスク様とシュラ様が喧嘩になっていたら大変だと思って、慌てて出てきたんです。」
「ンなモン、余計なお世話だっての。この俺が猫相手に喧嘩なンかすると思うか?」
「すると思うから、急いで戻ってきたんじゃないですか。猫とはいえ、中身はシュラ様ですし。」


人の姿の時よりも、猫となった今は怒りの沸点が低くなっているシュラ様。
ちょっと気に入らない事があると、あの危険な両手両足を振り回してギャーギャーと大騒ぎするのですもの。
私は未だ毛糸玉にじゃれるシュラ様に近付き、その小さな頭を背後から指で小突いた。
ちょっと吃驚した様子で振り返った彼は、私が戻ってきていた事に、その時、始めて気が付いたらしい。
それまで夢中になっていた毛糸玉をアッサリと手放し、ヒョイと私の腕の中へと飛び込んでくる。


「ミャ、ミャ。」
「シュラ様、私より毛糸玉の方が好きだったんじゃないのですか?」
「ミミャッ?!」


腕に抱き留めたは良いが、そのまま好きにさせるのも、何だかちょっと気に入らない。
なので、人差し指で彼の狭い眉間をグリグリしながら、ワザと冷たい言葉を掛けてやった。


「オマエねー、アンヌ。毛玉に嫉妬かよ。つか、俺に嫉妬?」
「デスマスク様は黙っていてください。」
「へーへー。」
「ミ、ミャミャ!」
「そんな事はない、ですって? 私が戻ってきた事にも気付いてなかったのに?」
「ミ、ミャ!」


流石のシュラ様も、酷く焦った様子で、言い訳らしき鳴き声をミャーミャーと上げているのが、ちょっとだけ可愛いとは思ったものの、そう簡単に許す気はない。
私だって怒る時は怒るのだ。
そんな訳で、眉間グリグリの次は、敏感な耳を少し強めに摘み上げてやった。


「ミャミッ?!」
「また、そんな変な鳴き声上げて。」
「ミャ、ミャ。」
「擽ったいのですか? 離して欲しいのですか?」
「ミャッ。」
「なら、ちゃんと反省してください。」


耳を摘んでいた指をパッと離せば、背筋をピンと伸ばしたシュラ様が、私の腕の中で深々と頭を下げる。
その仕草が、また何とも言えず愛らしく、結局、アッサリと許してしまった私は、そのままギュッと彼の小さな身体を抱き締めた。
シュラ様は直ぐに調子に乗って頬っぺたにスリスリと擦り寄ってきたけれど、お風呂に入った事で更に艶々フカフカになった触り心地は、とても気持ちが良くて。
それ以上、怒る気力を失ってしまった私だった。





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