――カッカッカッ……。


「わぁ、食べてる食べてる。」
「なかなかイイ食いっぷりだな。」


喧嘩ばかりのシュラ様とアイオリア様に、半ば無理矢理に仲直りをさせて。
今は二匹並んで、デスマスク様特製の猫ご飯を食べている。
流石はデスマスク様と言ったところか。
二匹共、物凄い勢いでガツガツと咀嚼し、飲み込んでいく。


「これなら猫缶なんて必要ないんじゃないですか? デスマスク様の猫ご飯だけで十分みたいです。」
「いや、ダメだ。」


モリモリと食事を進める二匹の様子を、その場にしゃがみ込んで(別名ヤンキー座りとも言う)眺めていたデスマスク様は、キッパリと私の言葉を否定した。
どうしてだろう、こんなに美味しそうに食べているのに。
あ、まさか作るのが面倒とか、そういう理由?


「違ぇよ。コイツ等、中身は人間でも身体は猫。だったら、猫に必要な栄養素はキッチリ与えてやンねぇとな。手作りのモンじゃ栄養が足りなかったり偏ったりする。数日に一回程度なら手作りもイイかもしれんが、ずっとコレって訳にはいかねぇだろ。」
「そうなのですか。」
「そりゃそうだ。動物には、それぞれに合った食いモンってのがあンだよ。野生の猫なら鼠や雀を一匹丸ごと食ったりして必要な栄養を摂取するンだろうが、飼い猫はそうはいかねぇ。だから猫缶って事だ。アレには猫に必要な栄養が、キッチリと入ってるからな。」


鼠……、雀……。
一瞬、黒猫姿のシュラ様が鼠を咥えている状況を、うっかり想像してしまった。
う、わぁ……。
それは勘弁していただきたいものです。
俊敏なシュラ様の事、狩りならば見事にやってのけそうですけれど、だからといって、鼠取りなど絶対にしないで欲しいものだ。


そうこう言っている間に、二匹のご飯タイムが終わったようで。
満足気な顔をして頭を上げると、長い舌を伸ばしてペロリと口の周りを一舐め。
それから二匹同時に、ゲップと心地良さそうな息を吐いた。


「美味しかったですか、シュラ様、アイオリア様?」
「ミャン。」
「ミィ。」
「そうですか、良かったですね。」


お腹が膨れたお陰で短気が治まったのか、シュラ様がアイオリア様を襲うような気配は、もう見えない。
私は横一列に並んだ猫ちゃんの頭を、同時に撫で撫でして上げた。
頭に手が触れると、キュッと目を細める仕草が何とも言えず可愛らしい。


「見ろ、アンヌ。」
「はい?」


デスマスク様は何処から探してきたのか、その手にフワフワした繊維が先端についている細い棒を持っていた。
あれは、家具の埃を払うために使うお掃除用具だ。
それを、おもむろにシュラ様の前に置き、それからヒラヒラと左右に動かしてみせた。


「ほ〜れほれ。」
「ミャ?! ミ、ミャ!」


なる程、ねこじゃらしの代わりって訳ですね。
じゃれ付くシュラ様の横で、アイオリア様も興味津々な顔でソレをジッと眺めている。


「こうして追っ駆けてじゃれ付くのも、鼠狩りの習性が残ってるからなンだろうぜ。本能ってヤツだな。家飼いの猫でも、タマに昆虫なンか咥えてたりすンだろ? あれも本能だな、多分。ま、猫缶だけじゃ補いきれねぇ栄養を、昆虫を食うコトで補充してるってのもあるンだろうけどな。」
「こ、昆虫を食べて……。」


ま、まさかシュラ様やアイオリア様が昆虫を捕まえたりだとか、間違っても食べたりはしませんよ、ね?
想像するだけでも恐ろし過ぎます。
そんな事したら、絶っっっ対に部屋には入れて上げないんだから!





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