部屋に戻ってからのお二人は、見事に対照的な様子だった。
教皇宮での話し合いの最中、グッスリと休んでいたシュラ様は、お陰で体力が有り余っているのか、部屋の中をグルグル走り回っている。
テーブルに飛び乗り、ソファーを渡り、本棚へとジャンプしてみたり、兎に角、元気いっぱいだ。
一方のアイオリア様は、ソファーの片隅でグッタリと休んでいた。
余程、若い女官達の攻撃(?)が効いたのだろう、クッションの上で丸くなって眠っている。


「もう七時を越えてンな。メシにするか。」
「でも、猫の餌なんてココにはないですよ。」
「一食分くれぇなら、まぁ、なンとかなンだろ。」


そう言って、キッチンへと姿を消したデスマスク様。
暴れ回るシュラ様の事が心配だったが、流石に自分の宮のものを破壊したりはしないだろう。
私は彼等をリビングに残し、デスマスク様の後を追って、キッチンへと向かった。


「勝手に使わせてもらってるからな。」
「あ、はい。どうぞ。」


デスマスク様は、先程、シュラ様が見事にカットしたカボチャを茹でていた。
同じく茹でた人参と合わせて裏ごしをして、ペースト状のものを作ると、それを細かく裂いた鳥肉のササミに手早く和えていく。


「ま、こンなモンだろ。」
「これが猫の餌?」
「今夜はコレで我慢してもらわねぇとな。明日の朝にも、猫缶買ってきてやるよ。」


出来上がった鳥ササミの野菜ペースト和えを、二枚のお皿に少量ずつ盛り、その皿を持って、リビングへと引き返す。
でも、そんなに少しばかりで、シュラ様達は満足するのだろうか?
シュラ様もアイオリア様も、なかなかの大食漢ですが。


「あンま食わせ過ぎると、戻しやがるンだ。猫ってのはな。」
「そうなのですか?」
「猫は存外、小食なンだよ。」


それは知りませんでした。
ワンちゃんとは違うのですね、猫ちゃんって。


「ご飯ですよ。シュラ様、アイオ――、あっ!」
「ミャン!」


お皿を運ぶデスマスク様の後ろに続いてリビングに入ると、先程まで部屋中を走り回っていたシュラ様は、いつの間にやらソファーの上に移動していた。
そこには元々、アイオリア様がグッタリと横になっていた筈で……。


「こら! 何をしているんですか、シュラ様!」
「ミャーン!」
「ミ、ミイィ……。」


シュラ様は、何とソファーの上で伏せっているアイオリア様に圧し掛かって、ゲシゲシと足蹴にしているではないか。
アイオリア様をこの宮で預かる事になったのが気に食わないからといって、いくらなんでも、こんな仕打ちは酷過ぎる。
しかも、アイオリア様は疲れてヘトヘト状態だというのに。
何処の暴君(暴猫?)ですか、貴方は。


「シュラ様、止めてください!」
「ミャー!」
「テンで止める気ねぇみてぇだぞ。オイ、アンヌ。これ、ちょっと持ってろ。」
「あ、はい。」


デスマスク様はご飯のお皿を私に預けると、直ぐさま、シュラ様の首根っこをムンズと無遠慮に掴んで引き離した。
摘み上げられたシュラ様は、目を尖らせ、歯を剥き出しにして、手足をバタつかせる。
だが、そこは手足の長いデスマスク様が、その腕を伸ばしてしまえば、リーチの差のために、シュラ様の手足の聖剣は、ただただ空を斬るばかり。
私は近くのテーブルにお皿を置き、直ぐにアイオリア様を腕の中に救出した。


「キシャー!」
「自業自得だ、バカ山羊。」
「大丈夫ですか、アイオリア様?」
「ミ、ミイィ……。」
「ミギャー!」


デスマスク様に摘まれて暴れもがくシュラ様と、私の腕の中でグッタリとするアイオリア様。
対照的な二匹の猫ちゃんの姿に、今夜一晩、無事に過ごせるのかしらと、ちょっとだけ不安にもなった。





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