5.猫ちゃん達との戯れ



「んじゃ、俺等は一旦、宮に帰るわ。アフロディーテが戻ってきたら直ぐに呼んでくれ。」
「すみません、宜しくお願いします。」
「ミャッ。」


シュラ様を腕に抱いたままソファーから立ち上がると、彼はココに来た時と同じように、サガ様とアイオロス様に向かって、シュパッと右の前足を上げてみせた。
何だか、「後は宜しく頼む。」と言っているみたいで微笑ましい。
サガ様の膝の上でグッタリしていたアイオリア様は、デスマスク様が文字通り摘み上げて、小脇に抱えた。
そして、そのまま私達は執務室を後にした。


「デスマスク様、アイオリア様も私が連れて行きます。こちらに渡してください。」
「あ? なンでだよ?」
「だって、アイオリア様。凄く嫌そうな顔してますもの。可哀想です。」
「ぁあ? 俺のドコが嫌だってンだ?」


それを上げたらキリがないと思いますけど。
まず、その抱え方が嫌でしょうし、扱いも乱暴ですし。
ドスドス歩くから、振動も激しそう。
ただでさえ疲れているのに、この扱いは、ちょっとねぇ……。


「アンヌのトコに預けたら、シュラと喧嘩になンじゃねぇの?」
「私の腕の中で喧嘩するようなら、二人共、もう抱っこしませんから大丈夫です。ね、シュラ様?」
「ミャッ?!」


これくらい厳しく言っておけば、流石のシュラ様も大人しくしてくれるだろう。
少なくとも磨羯宮に到着するまでは、静かにしてくれる筈。
シュラ様は顰め面をしている(ように見える)けれど、少しは仲良くしてくれなきゃね。


「さ、アイオリア様、こちらにどうぞ。」
「ミ、ミィ。」


教皇宮へ来た時と同じように、両手に後ろ向きの猫ちゃん二匹を抱えて歩く。
目の前にはユラユラ揺れる小さな頭が二つと、その頭から伸びるピンと尖った猫耳……。
可愛い、本当に可愛い。


――かぷっ。


「ミャ、ミッ?!」
「あ、やっぱり、まだ敏感なのですね、シュラ様の耳。変な鳴き声、上げて。」
「また、ンな事やってンのか、オマエは?」
「だって、シュラ様の耳、噛じり付きたくなるくらい可愛いのですもの。」


この可愛さは、私に食んでくれって言っているようにしか見えない。
噛んでもらいたくて、ピョコピョコと揺れているようにしか見えない。


「ミャ、ミャ。」
「ミイィ?」
「ミャミャッ。」


擽ったそうに耳を引っ掻く仕草をみせるシュラ様。
それをアイオリア様は、真横から不思議そうに見ている。
余りに可愛いので、もう一回、かぷりと耳を食めば、ミャッミャと声を上げて、悶える仕草。
大丈夫かと、シュラ様の頭にポンポンと手を伸ばすアイオリア様。


「ンな事して、遊ンでる場合じゃねぇぞ、アンヌ。ったく。」
「は、はい。すみません。」


可愛い猫ちゃん達と戯れて歩いている内に、磨羯宮は、もう目の前だった。
帰ってきたとはいえ、まだまだ気は抜けない。
明日の朝、アフロディーテ様が戻ってきたら、それで万事解決。
シュラ様もアイオリア様も、あっという間に元通り。
そうなってくれれば良いのですけど、果たしてどうなる事やら。
そんな都合の良いように事が運ばないかもしれないものね。
私は不安な気持ちのままで、部屋へと入っていった。





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