「可愛い〜。」
「ふわふわ〜。触り心地、凄く気持ち良いよ。」


――キャッキャ。


アイオロス様と彼の抱く猫ちゃん(姿のアイオリア様)を取り囲む女官の子達から、華やかな声が溢れている。
アイオリア様は次から次へと女官達の手から手へと渡り、順に抱っこされては撫で回されたり、頬擦りされたり、兎に角、可愛がられ放題だ。
それをアイオロス様は嬉しそうに見ているけれど、当の本人(本猫?)のアイオリア様は、少々グッタリ気味なご様子。


「モテモテですね、アイオ――、じゃなかった、リアちゃん。」
「おう、羨ましいモテっぷりだな、ありゃ。」
「シュ――、じゃなかった、シーちゃんも、あんな風に威嚇しなかったら、彼女達に可愛がってもらえたのに。」
「ミャン。」


私の言葉などサラリと無視して、頬っぺたに擦り寄ってくるシュラ様。
いい加減、人前で甘えるのは止めて欲しいわと思いながら、その身体を引き離すと、「ミギャー!」と怒って暴れる始末。
仕方ないので、また抱っこをして上げれば、今度は鎖骨やら胸元やら、デコルテ付近にスリスリ攻撃だ。
本当に我が侭で、勝手気儘なのだから。


「ミャ、ミャッ。」
「あンな女共に触られるよか、アンヌのオッパイに埋もれていてぇ、って言ってるぜ。」
「えっ?! デスマスク様、猫語が分かるんですか?!」
「猫語っつーか、ソイツは単純だからな。考えてる事なんざ丸分かりだ。」
「ミャン。」


肯定の意味なのか、コクコクと頷いてみせるシュラ様。
うぅっ、その仕草、破壊的に可愛らしいんですけど!


「ミャミャ、ミャン、ミャン。」
「ああいうキャピキャピした女共は好かん。」
「ミャン、ミャミャミャン。」
「俺はオマエが居ればそれで良い、ってよー。全く、お熱いこって。」
「ほ、本当にシュ――、シーちゃんが、そう言ってるのですか、デスマスク様?」
「ミャン!」


どうやらデスマスク様の通訳(?)に間違いはないらしい。
何度も頷いては、その都度、頬に擦り寄ってくるシュラ様の態度でも分かる。
確かに、彼は教皇宮に勤めているような、女の子女の子した黄色い声を上げる子達は苦手だと、前々から言っていた。
だからといって、あの威嚇はやり過ぎじゃないかと思いますが。


「ミャミャッ。」
「な、何ですか?」
「オマエ以外の女にゃ、触られたくねぇンだとよ。全く、プライドの高い猫だぜ。」


そう言ってくれるのは嬉しいけれど、ちょっと頭を撫でられるくらいなら、別に良いんじゃありませんか?
だってほら。
アイオリア様を囲んでいる彼女達の視線が、時々、突き刺さるようにコチラへと向かってくるもの。
あの目は間違いなく「黒猫ちゃんも触りたいのに、何を独り占めしてるのよ、あの女!」って言ってるわ、確実に。


ハアァと、小さく溜息を吐く。
すると、女官の子達に囲まれ、抱っこされた状態のアイオリア様と目が合った。
彼も疲れてきているのか、うんざりしているのか。
彼女達に見えないよう、顔を逸らして、小さく溜息を吐いた。
モテるというのも良い事ばかりじゃないのだなと思った。





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