暫くして、猫ちゃんを愛でる事に満足したのか、やっと女官の子達が退出していった。
執務室に訪れる静寂。
散々、好き勝手に撫で回されたアイオリア様は、サガ様の膝の上でグッタリと伏せっている。


「何と言うか……、凄まじい熱気だったな。気力を根こそぎ奪われた気がする。」
「十代の若ぇ女なンて、皆、あンなモンだろ。圧倒されてどうすンだよ。」
「そうだぞ、サガ。逆にコッチが体力奪い取るくらいの気持ちでなきゃな。勝負には勝てん。」
「お前は、あの子達と何の勝負をする気なんだ、アイオロス?」


変な方向に意地をみせようとするアイオロス様の顔を、チラと眺め遣るサガ様の顔は、酷くゲッソリしているように見えた。
その膝に乗るアイオリア様も、この数分で大いにやつれたように見えるのは気のせいかしら?
と言っても、あのモコモコの毛に隠れて、顔の輪郭は良く分からないのだけれど。


「で、これからどうするよ? アフロディーテのヤローが戻って来ンのを待ってろってか?」
「いや、どんなに早くても戻りは深夜になる。多分、朝方近くなるのではないだろうか。それまでココで待機となると、彼等にもアンヌの体力的にも、厳しいだろう?」


サガ様はそう言うと、私と私の首元に擦り寄るシュラ様を見遣り、それから膝の上のアイオリア様の身体を頭から背中へと一撫でした。
それを受けて、「ミィ。」と小さく鳴き声を上げたアイオリア様は、一瞬だけ小さく頭を上げたが、また直ぐにグッタリと伏せってしまう。


「でしたら、今日は一旦、磨羯宮に戻ります。シュラ様は勿論、連れて帰りますけど、アイオリア様はどうしますか?」
「そうだなぁ。出来れば俺が面倒みたいけど、今夜は自宮に戻れそうにないんだよな。」
「私もだ。」


アイオロス様とサガ様、二人同時に大きな溜息を吐く。
余程、この猫ちゃん達と一緒に過ごせない事が残念のようだ。
サガ様に至っては、名残惜しげにアイオリア様を撫で回している。


「だったらアイオリアも一緒にアンヌが面倒みりゃ良い。こうなりゃ、一匹も二匹も、あんま代わンねぇだろ?」
「そうですね。何か起きた時の事を思えば、バラバラでいるよりは、お二人共に私の目の届く場所にいていただいた方が安心ですし。」
「ミャッ?!」


アイオリア様も磨羯宮で預かると聞いて、シュラ様がビクリと反応した。
そして、不機嫌そうな声色で、ミャーミャーと抗議の声を上げ、目を尖らせて見上げてくる。


「うっせーよ、山羊。こンな時くらい我慢しろってンだ。自分の立場分かってンのか、オマエ?」
「ミャミャ、ミャー!」
「テメェは独占欲が強過ぎなンだよ。あ、そうだ。俺も今夜は磨羯宮に泊まるわ。」
「ミギャッ!」


デスマスク様が泊まると聞いて、シュラ様の険悪顔が、更に険しくなった。
歯を剥き出し、今にもデスマスク様に飛び掛かって、噛み付いてしまいそうな殺気を漂わせている。
余程、デスマスク様の事がお嫌なのですね、シュラ様。


「何かあった時の事を思えば、その方が安心だろ。つか、心配すンな。俺は客用寝室を使わせてもらう。アンヌに手ぇなンて死んでも出さねぇよ。大体、六年も一緒に住ンでたンだ。その気があるなら、とっくの昔に押し倒してるっつーの。」
「ミ、ミャ?」


おお、流石はデスマスク様。
臨戦態勢で威嚇していたシュラ様を物ともせず、平気で頭をグリグリと撫でた挙句、上手い事、言い包めるなんて。
でも、デスマスク様が居てくださるなら、これ以上、心強い事はない。
これで少しは安心出来る……、だろう。



→第5話へ続く


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