「ミャ、ミャン。」
「こ、これは……。アイオリアもフワフワモコモコしていて触り心地が良かったが、シュラの短いこの艶々の毛も、また何とも……。上質の絨毯、いや、上質な毛布のように滑らかで……。」
「ミャッ!」


サガ様は余程、シュラ様の触り心地が気に入ったのか、髪の毛に夢中になっているのを良い事に、ここぞとばかりに触り捲っている。
うん、分かります。
シュラ様の艶々体毛は、本当に触り心地が良いですもの。
気付かぬ内に、手が勝手に撫で擦ってしまうのよね。


「オイ、見ろよ、アンヌ。サガのお祖父ちゃんっぷりが、益々、悪化したぜ。あの顔、ぜってーヤベェって。」
「ですから、それは言い過ぎですって、デスマスク様。」
「しっかし、このままじゃテンで話が進まねぇな……。」


チッと小さな舌打ち。
それから、それまでダラしなく座っていた姿勢をピシッと整える。
表情もキリッとして、こうして居住まいを正すと、デスマスク様も相当な男前なのだと、改めて気付かされるわ。
普段から、このくらいキリリとしていれば良いものを、勿体ないのだから。


「オマエ等、イイ加減にしろっ!」
「おっ?」
「むっ?」
「ミャッ?」
「ミィッ?」


多少の怒気を含んだデスマスク様の注意の声が響き、それまで猫二匹にメロメロになっていたサガ様とアイオロス様が、ピタリと手を止めた。
そして、サガ様の髪にじゃれ付いていたシュラ様と、アイオロス様の身体に纏わり付いていたアイオリア様も、ビクリと身体を震わせて、彼等の膝の上でビシッと背筋を伸ばした。


「ソイツ等を可愛がンのは構わねぇが、話が済ンでからにしろ! じゃねぇと、いつまで経っても解決しねぇだろが!」
「あ、あぁ。すまなかったな、デスマスク。」
「ミャン。」
「ミイィ。」


サガ様の詫びの言葉に合わせて、それぞれの膝の上で頭をペコリと下げる猫ちゃん二匹。
うぅっ、可愛過ぎるんですけど!
ゴツい男性の膝の上で、可愛らしい猫ちゃんがお辞儀をしているなんて!


「で、どうするよ?」
「そうだな……。まずは当事者のアフロディーテを呼んで、事情を聞くのが一番の解決策だろうが……。」
「アイツ、今朝から外地任務で、暫く戻って来ねぇとか言ってたぜ。」
「ならば、直ぐにでも呼び戻そう。代わりに、入れ替わりでカミュを行かせる事にする。」
「まず、何よりアフロディーテの話を聞かない事には始まらないだろ? 本当に彼の仕業なのか決まった訳じゃないし。仮にそうだとしたら、解毒剤を作っているかもしれないしな。」
「今までのケースだと二・三日で元に戻ったが、今回は格段に効力が上がっているようだからな。直ぐに戻るとも限らない。」
「つまりはアフロディーテ待ちっつー事か。」
「そうなるな。」


流石は教皇補佐のお二人と、冷静沈着で(自称)頭脳派のデスマスク様。
相談を始まれば、あっと言う間に話が進んでいく。
途中、サガ様とアイオロス様は猫ちゃん達を膝に乗せたまま、何やらブツブツと声を発していたが、どうやら小宇宙を使って、アフロディーテ様やカミュ様に連絡を取っていたらしい。
直ぐにカミュ様が部屋に現れ、酷く驚いた顔をして私達の事を眺めた。


それもそうだろう。
シュラ様とアイオリア様が猫の姿になっている上、その二匹がサガ様とアイオロス様の膝の上に、ちょこんと座っているのだから。
しかし、そこはクールを信条にしているカミュ様だけあって、事情を聞いて納得すると、直ぐに身を翻し、任務地へと赴いていった。
それでも、部屋を出ていく前に、しっかりと二匹の頭と背中を撫で回していったところを見ると、カミュ様もきっと猫好きなのだろうなと、何となく思った。





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