それにしてもシュラ様、自由奔放過ぎやしないですか?
アイオロス様の左右の肩の上を行ったり来たりしていたかと思えば、今はそれに飽きたのか、片方の肩に立ち止まり、そのクリクリした金茶の髪をワシャワシャと引っ掻き回している。
幾ら何でも、相手は教皇補佐で、聖域の英雄と呼ばれている方。
しかも、近い将来には教皇その人になる方に対して、こんな事を平然としてしまうなんて。
アイオロス様は怒っていない(寧ろ、喜んでいる)とはいえ、失礼極まりない行動の数々。
いつもの(人の姿をした)シュラ様であれば、アイオロス様に対してこんな失礼な事は絶対にしない筈なのに。


「デスマスク様。」
「ぁあ? ンだよ、アンヌ?」
「シュラ様もアイオリア様も、中身は人間のまま猫の姿になっただけなのに、何だか凄く猫っぽくなっているような気がしないですか?」
「それなぁ……。どうやら人としての記憶も理性も、ついでに小宇宙も多少はあるが、猫としての習性も、ある程度は持ってるみてぇだぞ。さっきもションベンの時、中庭の砂、ザカザカ掘ってやってたからな、二匹とも。」


という事は、今のお二人は完全な人間では勿論ないが、完全な猫でもない、非常に中途半端な状態にあるという訳ですか。
これは出来るだけ早く人の姿に戻して上げなければ、変な癖が付いてしまうのではないだろうか。
とても心配になってくる。
だ、だって、元の姿に戻ってからも、む、胸にスリスリとかされたら困るもの!


「ミ、ミャン!」
「おっ?」


何やら勝ち誇ったようなシュラ様の鳴き声が聞こえ、ハッとしてアイオロス様の方へと視線を送った。
すると、恐ろしい事に、アイオロス様の肩の上から、更に頭の上へと身軽に飛び乗ったシュラ様が……。


――グ、グググ……。


た、立ったぁ?!
何とアイオロス様の頭の上に、後ろ足二本だけで立ち上がったのだ。
しかも、グラグラしながらも絶妙なバランスで、その状態をキープしている。
まるでサーカスの玉乗りワンちゃんのように。
流石はシュラ様、見事なバランス感覚だわ。
などと感心している場合ではない。
何という事をしてくださるのでしょうか、この人(猫)は!
あ、ああ、アイオロス様の頭の上で立ち上がるなんて、猫のじゃれ付きでは済まされない、度を越えているわ!


「おおっ! 凄いな、シュラ!」
「ミ、ミィッ!」
「アイオリアッ?!」


シュラ様が、自分の兄の頭の上に立った事に腹を立てたのか。
いや、寧ろ、自分の兄がシュラ様を「凄い!」と褒めた事に腹を立てたらしいアイオリア様。
焦った様子でサガ様の膝から飛び降り、そのまま一直線にアイオロス様へと飛び付いた。


「お、リアも俺のとこへ来たのか?」
「ミャー!」
「ミ、ミ!」


そして、飛び掛かられてグラリと揺れたアイオロス様の頭から、シュラ様が飛び降りると、それと入れ違いに、今度はアイオリア様がその頭の上へと乗った。
そのまま、シュラ様と同じように見事なバランス感覚で、後ろ足二本で立ち上がってみせる。


「おおっ! リアも凄いな! 流石は俺の弟!」
「ミ、ミィッ!」


アイオロス様の頭の上、心持ちふんぞり返って仁王立ちするアイオリア様。
どうやら、この二人は猫になっても尚、互いへの対抗心が消えないらしい。
シュラ様が出来るなら、自分も出来て当然、というところだろうか。
だが、一方の気儘な猫のシュラ様は、既にアイオリア様の事は眼中にないらしく、「ミャ、ミャ。」と鳴きながらサガ様のフワフワな髪の毛に夢中になってじゃれ付いていた。





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