「オイ、コラ、アンヌ。そこでじゃれ合ってねぇで、何があったのか言えっての。」
「うわっ。す、すみません……。」


ついついシュラ様の可愛さに、ココが何処であるのか忘れ掛けてしまいました。
恐るべし、黒猫シュラ様の魔力。


「えっと、あの。作り置きしていたアイスティーなんですけど……。」
「それが、どうかしたのか?」
「はい、昨日の夜に、アフロディーテ様からいただいた茶葉を使って作ったものなんです。」
「アフロディーテ、だと?」


私は膝に乗るシュラ様の滑らかな背中を撫で擦りながら、昨夜の事を思い出していた。
夕方、シュラ様が執務から帰ってきた直後に、彼から手渡された、その茶葉。
何でも帰宅途中で双魚宮に寄ったところ、アフロディーテ様に「飲んでみてくれ。」と渡されたらしい。
新たに育てた食用薔薇を使った試作品の紅茶だが、まだ人様に出せる段階ではないから、紅茶好きのシュラ様に、是非、試飲して欲しいとの事だったそうなのだが。
少し刺激が残っているかもしれないので、私には飲ませるなと、念を押されたという話だった。


「オイ、そりゃまさか……。」
「その『まさか』だろうな。間違いない。」
「またアイツの悪い癖が出たか……。」


私以外の三人が、同時に深い深い溜息を吐く。
え、何ですか?
何か良からぬ事でも分かったのですか?
サガ様、アイオロス様、デスマスク様の顔を順に眺め遣り、私は彼等の返答を待つ。


「それは数年に一度、発症する、アフロディーテの悪い病気だ。」
「え、病気?!」
「病(ヤマイ)の意味じゃねぇよ。悪ぃクセって事だ。」
「数年に一度、新種の薔薇が育つと、あの子はどんな手を使っても、その効能・威力を知ろうとするんだ。我々にとっては非常に厄介な事にね。」


それってつまり……。


「お茶やお菓子、食事に混ぜ込み、仲間に一服盛るのだ。一般人相手では死にかねない毒でも、ある程度の耐毒修行を積んでいる黄金聖闘士ならば死ぬ事はないという理由で、あの子は平然と仲間を実験台にするんだよ。」
「俺が知ってるだけでも二人、被害に遭ったのを知っている。その後はどうだった?」
「その後は二回だ。五年前と九年前に一回ずつ、そうだったっけなぁ、サガ。」
「確か、そうだな。」
「そんな……、あの紳士なアフロディーテ様が……。」
「だから、病だっつってンだ。」


彼等の話によると、最初は十四年前。
まだアイオロス様が存命の頃に、幼児とも言えるミロ様に薔薇毒入りのクッキーを食べさせたらしい、しかも、とばっちりでカミュ様も。
九年前にはシャカ様、五年前にはアイオリア様(一回目)が、それぞれ被害に遭ったそうな。


「アイツ……。付き合いの長ぇ俺とシュラには、流石に盛らねぇと思ってたンだがな。遂に、やりやがったか。」
「まさかシュラが被害者になるとはな。しかも、この年齢で。」
「シュラの奴、余りに警戒心が薄過ぎるだろう。相手は、あのアフロディーテだぞ。しかも、ローズティーなんて怪し過ぎるものを貰って疑わないとは……。」


三人共、一服盛ったアフロディーテ様よりも、一服盛られたシュラ様の迂闊さに呆れ果てている様子。
なのに、当の本人(本猫?)ときたら、自分の事を言われているにも係わらず暢気に大きな欠伸などしているし。
挙句の果てに、話を聞いている事に飽きたのか、私の膝の上でクルンと丸まり、そのまま寝てしまった。
そんなシュラ様を見ていたアイオリア様は、目を丸くして私を見上げ、「ミィー。」と何か言いた気に鳴いた。





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