抱っこしてみると、より一層、ハッキリと分かる。
ふわふわクリクリの体毛に隠れているアイオリア様の筋肉は、ドッシリとしていて力強い。
それでいて動きは機敏で軽い。
細身だが、しなやかで張りのある筋肉をしたシュラ様とは、同じ猫でも全く違った印象だ。


「ミャッ。」
「ミィッ。」
「ひゃ、擽ったい!」


左右から全く違った質感の猫っ毛で頬に擦り寄られれば、不思議な感覚が身体を襲う。
擽ったいけど気持ち良い。
でも、その気持ち良さは、左右の頬で、それぞれ違っている。
艶々のシュラ様と、ふわふわのアイオリア様。
何、このパラダイス。
何、この幸せな感覚は。


「何つーか……、両手に花、ってよりも、両手に猫だな。」
「……はい?」
「寧ろ、花より団子、ってか、聖闘士より猫だな、こりゃ。」
「だからっ! 何ですか、それは?」


呆れ顔でコチラを見ていたかと思えば、今度は何事かを呟いてニヤニヤと笑うデスマスク様。
しかも、自分で言った事が余程おかしかったのか、クククッと笑いを噛み殺している。


「何がそんなに面白いのですか?」
「いや、すまねぇ。オマエがそンなに猫好きだったとは知らなかったンでな。」


こんなに可愛い猫ちゃんなら、猫好きじゃなくてもメロメロになると思うけれど。
あ、『メロメロ』って言葉、もはや死語ですかね?


「よし。じゃ、その二匹。しっかり抱えてろよ、アンヌ。」
「え? どうしてです?」
「今から俺がオマエを抱えて、教皇宮まで走る。ソイツ等が振り落とされちまったら困ンだろ。」
「え? 教皇宮に行くのですか?」


一体、何をしに?
シュラ様とアイオリア様を両腕に抱っこしたまま、私は首を傾げる。
それに釣られてか、彼等も首を傾げる仕草が、また悶えるくらいに可愛らしい。


「もう六時を過ぎた。報告は早ぇ方がイイ。これ以上、時間が経てば、サガは兎も角、アイオロスのヤツは自宮に戻っちまうかもしンねぇからな。出来れば二人揃ってるトコに実物を連れて行きてぇし。」
「で、でも、明日の朝だって良いのではないですか? 一晩経ったら、元に戻っているかもしれないです。それを確認した後でも……。」
「早ぇ方がイイっつってンだろ。悠長な事は言ってらンねぇの。」


デスマスク様が言うには、このお二人に限った猫化であれば特に問題はないという(いや、十分に問題あると思うけれど)。
だが、原因が分からない以上、他にも猫化する者、或いは、既に猫化している者が出てくるかもしれない。
もし、これが猫に変化してしまうウイルスの類だったら、どうだろう。
その内、これが聖域中に蔓延して、聖闘士はおろか一般人まで猫化してしまったら、ココはモヌケの殻同然。
敵に攻め入る絶好の機会を与える事になりかねない。
ならば、何らかの対策を取るためにも、報告は素早く敏捷にが大事。


「俺もオマエも、いつ猫化するか分からねぇ。悠長な事は言ってらンねぇぞ。」
「た、確かに……。」


デスマスク様の話を聞いて、不安ばかりが胸に広がる。
私は抱っこしたままの猫ちゃん達を、思わずギュッと抱き締めてしまった。


「ミャン。」
「ミィ。」


シュラ様もアイオリア様も、まるで励ましてくれるかのように鳴いた後。
左右からチュッと両頬にキスをくれた。





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