「ミイィッ。」
「おー、気に入ったか、アイオリア?」
「ミイィィッ。」
「そうか、良かった良かった。」


もこもこ三角筒の中にスッポリと入り込んだアイオリア様は、ミロ様に撫でられて嬉しそうな鳴き声を上げる。
そして、頬を両サイドのもこもこに擦り付けて、至福の表情を見せた。
それはそうですよね。
今までのクッションでは、お腹しか暖かくなかったのに、これだとお腹だけでなく、身体の両側と背中までも包まれていて、ポカポカで暖かだもの。


「……ミイッ?!」
「え? いや、ちょっと、シュラ様?! 何をしているんですか?!」
「ミャッ!」


突然、吃驚顔で目を真ん丸にして声を上げたアイオリア様に、何事かと思って見てみれば、何とシュラ様が筒の足の方側から顔を突っ込んで、無理矢理に中に入り込もうとしているではないか。
いやいやいや。
幾ら柔軟でしなやかで狭い場所にも簡単に入り込める猫ちゃんの身体でも、この細い筒の中に二匹も潜り込むのは無理でしょう。
しかも、もふもふ毛の下は筋肉質でどっしりした体格のアイオリア様は、見た目以上に身体が大きい。
細身で短毛のシュラ様と言えど、彼と一緒に入り込むのは至難の業だ。


「おいおい、無理するなー。」
「言っても、無駄無駄。ソイツ、他人の言う事なンて、ぜってー聞かねぇから。」
「でも、ちょっと凄い事になってますよ? 放っておいても平気ですか、これ?」
「ミミミミミッ!」
「ミミャミャミャミャッ!」


ギリギリ、ジリジリ……。
力尽くで頭を押し込もうとするシュラ様。
その狭い眉間に後ろ足を押っ付けて、こちらも力尽くで押し返そうとするアイオリア様。
これは、また見事に手に汗握る攻防戦、実力の拮抗した白熱戦だわ。


「ミャッ!」
「ミミィッ!」


ブチブチブチッ!
シュラ様がアイオリア様の後ろ足を跳ね除け、勢い良く筒の中に頭を突っ込んだ瞬間。
筒の上側で留められていたボタンがブチブチと弾け飛んだ。


「あーあー。何やってるんだよ、お前等は。」
「ミミャッ!」
「ミイィィィ……。」


呆れの声を上げたミロ様の前で、勝ち誇ったようにふんぞり返るシュラ様と、悲しそうに眉を下げるアイオリア様。
ぬくぬくと暖かそうにしていたアイオリア様が気に食わなかったのか、ただ単に自分も中に入って暖かくなりたかったのか。
多分、両方でしょうね。
この自己中な黒猫ちゃんの事ですから。


「俺が一個しか買ってないと思ってたのか、シュラ。大丈夫、もう一個、買ってあるからさ。ほら、喧嘩すんなよー。」
「ミー。」
「ミャー。」


そう言ってミロ様は、ヒョイと二匹の猫ちゃんを抱き上げた。
そして、アイオリア様をデスマスク様に、シュラ様を私に渡して預けると、自分は先程と同じく三角形の筒をプチプチとボタンを留めて作っていく。
さっきまでアイオリア様が入っていた焦げ茶の筒と、新たに紙袋から取り出したクリーム色のマットで作った筒が床の上に並べられた。
それを見たシュラ様が、早く入り込みたくなったのか、私の腕の中でうずうずと小刻みに動き始めた。





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