闇のリズム的真冬のにゃんぱに



「さみぃなぁ……。」
「寒いですねぇ……。」


この数日、欧州全土を襲った寒波の影響で、凍えそうな寒さに辟易しつつ部屋の中に籠っていた私達。
私達というのは、この宮の女官である私と、様子を見に来たデスマスク様。
そして、月に一度のアレのせいで、猫ちゃんの姿と化しているシュラ様とアイオリア様。


ギリシャといえど山奥にある聖域、冬になれば雪が降る事もあるくらいで、そんな山の気候に加えて、この凄まじいまでの寒波。
今年は異常気候なのか、もう冬も過ぎ去ろうとしている時期に、十二宮の階段が真っ白な雪に覆われる、そんな天気になっている。
ある程度は寒くなるといっても、北欧かと思えるまでの寒さには対応していない各宮のだだっ広い部屋の中は、ジワジワジワジワと寒気が増す一方だった。


でも、人間のデスマスク様や私は、まだマシなのだろう。
寒ければ着込む事も出来るし、ブランケットに包まっている事も出来る。
だが、猫ちゃん姿のシュラ様とアイオリア様では、そうはいかない。


「ミイィ……。」
「ミミャ……。」


すっかり元気を無くして小さく丸まっていた。
キャットタワーを上り下りする事もなければ、部屋の中を走り回ったり、飛び跳ねたりもしない。
犬と違って寒さに弱い猫ちゃんは、少しでも寒さを防ごうと小さく縮こまってとぐろを巻いている。
クリクリもふもふ毛のアイオリア様でもブルリと震えているのだから、短毛のシュラ様は、もっと寒さにやられているのだろう。


「あ〜、ホットココア、さいこー。」
「ミミャッ!」
「デスマスク様。シュラ様が怒っていますが。」
「あぁ? 知らねぇなぁ。」


自分ばかり温まりやがってと、目を吊り上げてデスマスク様を睨む黒猫ちゃん。
しかし、身体の下に仕舞い込んだ手足を出したくはないのか、首を上げるだけで、そこから動こうとはしない。
電気ヒーターも点けているし、もこもこクッションも敷いて上げているんですけどね。
それだけでは全く寒さ対策にはならないようだ、彼等にとっては。


「邪魔をするぞ〜、アンヌ。」
「あ、ミロ様。こんにちは。」
「寒いなぁ、今日は。お、俺もホットココア飲みたい。」
「ミミャッ!」
「自分で淹れろって言ってンぞ、クソ猫が。」
「ミギャッ!」
「クソ猫じゃないぞ、この蟹が! って言ってるぞ、シュラ猫が。」


ミギャミギャと抗議の声は上げているものの、一歩も動かないどころか、手足を仕舞い込んだ猫箱状態のシュラ様では、さっぱり迫力がない。
一方のアイオリア様はというと、怒る気力も寒さに奪われているのか、もこもこクッションの上で丸まったまま、黙って眠っている。
いつもならば、姿を見せた瞬間に飛び付いていくミロ様の登場だというのに。


「猫共が俺に擦り寄ってこないとは……。余程、寒さが堪えてるみたいだな。」
「すっかり電気ヒーターとお友達になってますよ。さっきから、そのもこもこのクッションの上から動こうとしませんし。」
「そんなこったろうと思ってさ。良いもの買ってきたんだぜ〜。見ろよ〜、これ!」


そう言って、ミロ様が紙袋から取り出したのは、焦げ茶色のフワフワもこもこ毛の、猫ちゃん一匹が丁度乗れる大きさのマットだった。
いや、でも、もこもこは今のクッションで足りていますけど。


「代り映えしねぇじゃねぇか。」
「それが、ちょ〜っと違うんだなぁ。見てろよ。」


マットの両端に手を掛けたミロ様は、そのまま上に折り返した端と端を、上方でパチパチと止めた。
すると、猫ちゃんが入るのに丁度良さげな大きさをした、三角形の筒が出来上がった。
当然、中はフワッフワのもっこもこで、中に猫ちゃんが入れば、かなり暖かそうだ。


「ほら、アイオリア。入ってみろ〜。」
「ミー。」


ミロ様に促されてフワもこ筒の中に潜り込んでいくアイオリア様。
その入り込む仕草だけでも可愛いのに、筒から頭だけがチョコッとはみ出した姿は、破壊的に可愛い。
しかも、私の予想以上にフワもこの中は暖かかったらしく、アイオリア様は「ミイッ。」と一鳴きした後、御満悦げに目を細めた。





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