……ん、んん?
どうも背後から何やら鋭い視線を感じるのですが。
でも、今は皆、このダイニングで食事をしている真っ最中。
私の背後には誰も居ない筈……。
え、えええ、ま、まさか……、お化け?!
本当は居ない筈の誰かが、私達の事を背後から見つめているのでは……?


恐る恐る振り返る。
背後にはダイニングの入口があるが、そこに人の姿はない。
少しずつ視線を下げていくと……、床に近い位置に、居た。
真っ黒ツヤッツヤな毛並みの猫ちゃんが、ヒョイと頭だけを出してダイニングの中を覗き見ているではないか。
あれは……、シュラ様?
じゃなくて、カプリコちゃんだわ。
か、可愛い、可愛過ぎるんですけど、その陰からこっそり窺い見るような仕草が。


「コッチへいらっしゃい。」
「……ミャッ。」
「カプリコちゃんもお腹が減ったの?」
「ミャンッ。」


トコトコとダイニングの中へと入ってくると、皆の視線が黒猫ちゃんへと向いた。
注目を浴びても、背筋をシャンと伸ばして歩く物怖じしない姿は、流石、カプリコちゃんだ。
なんて感心して見ていると、ヒュッと身軽に飛び上がり、私の膝の上に乗ってきた。


「わっ?! 吃驚した!」
「ミャッ。」
「わ、ちょっ。ひゃっ?! く、擽ったい!」


乗っかってきたかと思えば、直ぐに頭を私のお腹に押し付け、グリグリと潜り込むように擦り付けてくる。
ひえぇぇ、擽ったい、擽ったい!
脇腹に擦り付けられると、髭がチクチク刺さって、特に……、うひゃあ!


「……アンヌが悶絶してる。」
「さーすが、黒猫族だな。やる事なす事、エロい、エロい。」
「何故、俺の方を見る、デスマスク?」
「お前が元祖だからに決まってンだろ。」
「蟹族に言われたくないよねぇ。黒猫山羊族のシュラ。」
「蟹族じゃねぇ。」
「いっそアイオリアも加えて、猫族で良いだろ。」
「お、俺は猫族などではないっ!」


何やら訳の分からぬ会話が繰り広げられていますが、まずコッチを何とかしてください。
カプリコちゃんは顔の擦り付けに満足したのか、飽きたのか。
今は私の胸の谷間に顔を埋め、グリグリと潜り込ませている。
し、シュラ様にソックリなんですけど、カプリコちゃん。
どうして、こう皆、胸に埋もれたがるのでしょうか、黒猫ちゃんは。


「……プハッ。」
「プハ、じゃないでしょ、カプリコちゃん。貴女、雌猫じゃないの。」
「雄も雌も関係ねぇってこったな、オマエの胸は。」
「目の前に、それだけ立派な谷間があれば、潜りたくなるのは当然。そういうものだ。」


そういうものって、シュラ様……。
そりゃおかしい、そんな事はないだろうと、シュラ様が皆に突っ込まれる様子を見ながら、カプリコちゃんを胸の谷間から引き剥がした。
頭を撫でると、気持ち良さげに目を細めるのが愛らしい。
私は触り足りなく思っていた黒猫姿のシュラ様の代わりとばかりに、カプリコちゃんの頭から耳、頬、顎、首、背中と触れる部分は全部触り、アチコチ満足がいくまで小さな身体中を撫で回した。





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