「ミャーン、ミミャミャ……。」


私の膝の上には真っ黒な猫ちゃん。
眠たげな様子で丸まった背中を撫でて上げると、上機嫌な鳴き声を上げる。


「…………。」
「シュラ様。目付きが鋭くて怖いんですけれど。」
「俺の目付きが悪いのは生まれ付きだ。」
「そうだとしても、今は睨んでますよね、確実に。」


睨み付けている相手は、私の膝の上の黒猫ちゃん。
シュラ様とアイオリア様が突然に人の姿に戻ってしまった事もあってか、どうしても猫ちゃんに対する離れ難さが強くなっていて。
抱っこした猫ちゃんを手離す事が出来なくなっていた私に、アイオリア様が一夜だけ彼女を貸してくれたのだ。
という訳で、今、私の膝の上でゴロゴロしているのは、アイオリア様のところのカプリコちゃんだったりする。


「アンヌ、アイオリアのところに返してこい。」
「嫌です。今夜だけはカプリコちゃんと過ごします。明日になったら、ちゃんとアイオリア様に返しますから、少しだけ我慢してください。」
「何故、宮主の俺が我慢せねばならん。」


フンと鼻を鳴らし、随分と不満げなシュラ様。
ソファーにふんぞり返って座り、未だ私の膝の上のカプリコちゃんを睨み付けている。
猫ちゃん相手に、そんなにも敵意剥き出しにするなんて、大人げないですよ。


「相手が猫だろうと何だろうと嫉妬はする。」
「それは……、どうも有り難う御座います。」
「何故、礼を言う?」
「だって、それは……。」


嫉妬してくださるという事は、それだけ私を好きでいてくれているという事で、告白と同等とも取れる言葉。
ハッキリとそう言われれば、私じゃなくても嬉しいと思うだろう。
お礼を言っても何ら不思議ではないのでは?


「今更、礼を言うような仲ではないという事だ。俺とお前は夫婦みたいなものだし、ならば、相手が何だろうと嫉妬をしてもおかしくはない。」
「は、はぁ……。」
「何だ、そのぼんやりした返事は?」
「あ、いえ、すみません。」


お礼の次は謝罪。
対応を間違ったと思った瞬間、当たり前に彼の表情も、より一層、険しくなった。
お礼もいらないのだから、謝罪も不要。
私達の間では、それが当然だとシュラ様は言いたいのだ。


「可愛いですよ、猫ちゃんは。カプリコちゃんは猫になった時のシュラ様そっくりで、毛並みがツヤツヤで気持ち良いです、撫でていると。」
「止めろ、アンヌ。似ていると言われても嬉しくない。」
「じゃあ、はい。抱っこして、撫で撫でして上げてください。喜びますよ、カプリコちゃん。イケメン好きですからね。」
「おい、止めろっ。」


拒否しようとするシュラ様にカプリコちゃんを押し付けて、半ば無理矢理に抱っこをさせる。
シュラ様は自身が猫ちゃんになってしまって、撫でられる役回りばかりだけれど、こうして撫でて上げる方も楽しいし、気持ち良いんですよ。
ほら、撫で撫で撫で……。


「…………。」
「どうですか? 可愛いでしょ。」
「まぁ、気持ちは良いな。」
「ミミャ〜。」
「ふふっ。カプリコちゃんもシュラ様に撫でられて気持ち良いって言っていますよ。」


強面のシュラ様が、愛らしい黒猫ちゃんを膝に乗せて怖々と撫でている姿は、何処か面白くて、ほのぼのとしている。
こんな日常も楽しいだろうな、ずっと眺めていたい。
猫ちゃんを飼いましょうと、もう一度、提案してみようかしら?
まぁ、でも、絶対に断られるのでしょうけれど。



と暮らす日々
にゃんにゃんパニックは終わらない、かも



(猫も悪くはないな。)
(だ、だったら飼いませんか、ココで。)
(いや、駄目だ。)
(やはり嫉妬ですか……。)
(ミャ〜ン。)



‐end‐





どうしても『にゃんぱに』が書き足りなくなって、というか、にゃんこロスになって、再び始めた猫山羊さまと猫獅子くんシリーズw
書いている私が何より一番楽しませていただきましたよ。
それでは、ここまでお付き合いくださった皆様、有難う御座いました!

連載開始:2016.05.01
連載終了:2018.03.04



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