さて、と。
折角、キッチンに居ることですし、お茶でも淹れましょうか。
猫ちゃん達のオシッコタイムを待つ間に。


「俺、コーヒーな。」
「自分で淹れなよ。置きインスタントコーヒーがあるんだろう、キミ専用の。」
「ヘイヘイ、自分で淹れますよぉ。自分でやった方が美味いしな。」


ちゃちゃっとお茶を淹れ、それを立ったまま三人で啜る。
なかなかシュールな光景ですね。
大人が三人、キッチンでお茶を飲みながら猫ちゃん達の帰りを待つ様子は……。


「……てか、遅くないかい?」
「そういや、そうだな。」


喉が渇いていて、あっと言う間に飲み干したとはいえ、一杯分のお茶を飲み終えても、まだ猫ちゃん達が戻って来ないのは変だ。
そのままリビングで遊んでいるのか、寝てしまったのか、ノンビリと寛いでいるのか。


「ションベンにしては長過ぎンだろ。俺、戻って様子を見てくるわ。」
「皆で行こうよ。アンヌも。」
「はい、そうですね。」


三人、連れ立ってリビングへと戻る。
だが、猫ちゃん達の姿は見えない。
猫のトイレにも、もう居ない。
何処に行ったのでしょうか?
まさか勝手に外に出てしまった?
いや、でも、そうは出来ないようにシッカリと鍵も掛けている事ですし……。


「悪ぃ、アンヌ。ちょっと寝室、覗かせてもらうぜ。」
「あ、はい。どうぞ。」


了承の言葉を返すか返さないかのタイミングで、デスマスク様が寝室の扉を開いた。
が、それとほぼ同時に、何やら大きな声らしきものが響いたような気が……?
大きな物音も聞こえたような?
というか、肌色の人肌が一瞬、視界の中に飛び込んだような?


だが、一瞬で閉ざされてしまった扉。
今のは何?
幻覚ですか?
開けたデスマスク様は中に引き擦り込まれてしまったようにも見え、結果、中からはバタバタドタドタという騒音と、ギャーギャーと怒声が聞こえてくる。


「何だったんだい、今のは?」
「アフロディーテ様に分からなかったものが、私に分かる筈もありません。でも、確かに人の姿が見えましたが……。」
「そうだよねぇ。人だったよねぇ。猫じゃなかったよねぇ。」


などとボンヤリと呟き合っている間に、再びドアが開く。
呆然とする私達の前に出てきたのは、デスマスク様と、何と元の人の姿に戻ったシュラ様。
そして、その二人に両側からガッチリ両腕を掴まれた、これまた人の姿に戻ったアイオリア様だった。


「戻ったぞ。世話を掛けたな。」
「ホンット世話掛け過ぎだわ、オマエ等。イイ加減にして欲しいわ。ったくよぉ。」
「シュラ様。元に戻れて良かったです。アイオリア様も。」
「ま、良かったねと言っておこう。ところで、何故、アイオリアはキミ達に拘束されているんだい?」


デスマスク様に右腕を、シュラ様に左腕をガッチリと組まれて、身動きすら出来なくなっているアイオリア様は、顔を真っ赤にして俯いている。
唇を噛み締め、こちらを見ようともしてくれない。


「コイツ、服を着ながら、窓から逃げようとしやがったンだ。前ン時と同じようにな。」
「仕方なくデスマスクを引き擦り込んで、取り押さえてもらった。」


それで、あの物音と大声でしたか。
暴れるアイオリア様を取り押さえるとなれば、それなりの騒動になりますものね。
納得しました。


「アンヌと顔を合わせるのが恥ずかしいとはいえ、自分だけ逃げるとは卑怯だな。」
「そうそう。ちゃ〜んと面倒を見てもらった礼くらいはしていかねぇと。」


お礼?
別にそのような必要はないですけれど。
私も猫ちゃんと戯れて楽しかったですし、モフモフも堪能しましたし。
だが、シュラ様はアイオリア様の服の襟をムンズと掴んで、そのまま引き摺って出ていってしまった。
どうやらキッチンへと向かったようだった。





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