それから僅か五日後の事。
シュラ様と私は、何故か日本の地に降り立っていた。


「どうして、この暑い季節に、もっと蒸し暑くて過ごし難い国に来てるんでしょうか?」


日光が苦手だという事は、シュラ様も良くご存知の筈。
ちなみに、暑さもあまり得意ではない。
ギリシャとはいえ、山奥と言っても過言ではない聖域に生まれ育った身。
元々、身体も強くはないからか、暑さには滅法弱い。
そんな私を、このヒートアイランドに連れて来て、何が面白いというのでしょうか?


「確かにトウキョウは暑いが、目的地はココではない。」
「え?」
「まぁ、着けば分かる。」


そう言った後は、貝のように口を閉ざすシュラ様。
まるでクイズだ。
行き先は何処か?
何の目的で来たのか?
一向に教えてくれる気はないらしく、黙々と先へ進んで行ってしまう。


仕方ない、こういう人だものね。
そんなシュラ様を好きになったのだから、こういう時は、無理に答えを求める事は諦めなきゃいけない。
何も言わずに目的地へ連れて行って、私を吃驚させたいのか。
それとも、こういう会話自体が面倒だから、自分の目で見て確かめろと、そういう意味なのか。
どちらとも受け取れるけれど、多分、シュラ様の場合は後者だろう。


シュラ様は、こういった類のサプライズをするような人ではない。
寧ろ、本人が狙っていないサプライズが多いのよね。
この前のように、私に黙ってセクシーな水着を買ってきたりだとか。
シュラ様的には吃驚させる意図はなかったんだけど、結果として私は度肝を抜かれた訳で。
彼のちょっとした天然っ振りに右往左往させられて疲れもするけれど、楽しかったりもする。
他の人が相手だったら、絶対にそうは思わないのだから、これはやっぱり惚れた弱みというものなのかしら?


そして、降り立った空港の国際線ターミナルから移動する事、数分。
私達の目の前に、小さな飛行機が現れた。
この大きさ、もしかしてチャーター便かしら?


「グラード財団のプライベートジェットだ。アテナに使って良いと言われたのでな。」


だからって、遠慮なく使ってしまうシュラ様の神経の太さに吃驚です。
規模は小さいといっても、内装は豪華というか、高級感漂う作りで、革張りのシートに腰掛けるだけでも緊張してしまう。
飛び立つ飛行機。
車でも電車でもなく、飛行機を使って移動しているという事は、トウキョウからは相当に離れたところに向かうのだろう。
私がマトモに過ごせる場所であれば良いのだけれど。
声には出さずに、そう心の中でだけ祈った。





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