「ミミャア……。」
「はいはい。これに懲りて、もう暴れたり駆け回ったりはしないでくださいね。」


恨みつらみの籠もったアフロディーテ様の眉間グリグリ攻撃から、やっと解放されたシュラ様は、グッタリと私の膝の上にノビていた。
アイオリア様も横にやってきて、大丈夫かとシュラ様の様子を覗き込んでいる。


「ミミャ……。」
「反省は大事ですよ。形ばかりの反省など、相手にはキッチリ見抜かれますからね。心から反省しないと。」
「ミミャ……。」
「アイオリア様も他人事じゃないですよ。分かりましたか?」
「ミミッ。」


うつ伏せたシュラ様の背中と、チョコンと座るアイオリア様の頭を同時に撫でる。
右手にツヤツヤ、左手にフワフワ、両手にそれぞれ違う感覚。
う〜ん、私にとっては素晴らしい至福の時です。


「それにしても、いつになったら元の姿に戻れるのでしょうね?」
「ミミッ、ミー。」
「アイオリア様も気になるのですか?」
「そりゃあ、被害に遭った張本人だからね。気になるに決まっているさ。」


その被害の大元の元凶は、貴方ですけれどね、アフロディーテ様。
その自覚、ありますか?
ないですよね、絶対にないですよね。


「ミミャア……。」
「はいはい。シュラ様は、そろそろ立ち直ってください。」
「ミミャッ。」
「嫌だね、まだアンヌに甘えていたい、と言っているよ。そのムッツリ黒猫は。」


そうなのですか、シュラ様?
膝の上の猫ちゃんを見れば、グッタリしていた姿は何処へやら。
もぞもぞと頭を動かして、私の腿に顔を擦り付けて御満悦な様子。
そんなシュラ様の様子を見かねたのか。
アイオリア様が私の膝の間に潜り込もうとする猫ちゃんの頭の上に前足を置き、ギューッと押し付けた。


「ミミッ!」
「フガッ。」
「シュラはもう少し反省しろって事だね。」
「ミー!」


私の腿に顔面が埋まり、呼吸が出来なくなって暴れるシュラ様。
バタバタと手足を振り回すが、頭を押さえ付けている金茶の猫ちゃんは、涼しい顔でジワジワと前足に力を加えていく。


「フガガ……。」
「あの……。これ、息が出来ないのではないでしょうか?」
「ミッ!」


私の(あまり言いたくはないがムチムチに張った)腿に鼻も口も押し付けられては、呼吸する隙間は少しもなさそう。
アイオリア様もここぞとばかりに、黒猫ちゃんの後頭部をギュウギュウに押さえ付けていますし。


「モガモガ……。」
「あの、そろそろ手を離さないとシュラ様が爆発しそうですよ、アイオリア様……。」
「ミイッ!」
「フガッ、フガッ! ミギャー!」


遂にシュラ様が力任せに起き上がり、跳ね飛ばされて転がったアイオリア様に、ガバリと圧し掛かった。
金茶猫ちゃんを組み敷き、これでもかと猫パンチを繰り出す黒猫ちゃん。
これだけ見れば、じゃれ合う猫ちゃん達の可愛い姿でしかないのだが、中身がアイオリア様とシュラ様なのだから笑えない。
このまま放っておいたら、そのうち必殺技を放ちかねないだろう。
猫カリバーとか、猫ニングボルトとか。


「アンヌ。引き剥がすかい、こいつ等?」
「お、お願いします、アフロディーテ様。」
「手が掛かる猫共だよねぇ、本当に……。」


ヒョイと手を伸ばし、いとも簡単にシュラ様を摘み上げたアフロディーテ様。
一体、何をするのかと見ていたら、彼は手に黒猫ちゃんをぶら下げたまま、その手をグルングルンと回し始めた。





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