「さぁて、シュラ、アンヌ。そろそろ磨羯宮に帰ろうか。」
「ミャッ。」


アフロディーテ様の言葉に、シュラ様がしなやかな前足を高々と上に伸ばして、同意の鳴き声を上げた。
教皇宮に居るのも、すっかり飽きてきたのだろう。
ジョウロを置いて抱っこをすると、早く帰りたい様子でソワソワしているのが伝わってくる。


「もう帰って大丈夫なのですか?」
「大丈夫って言うか、このまま居ては書類の数を増やされるだろうからね。そうなる前に退散しないと。」
「ミミャミャミ。ミミャミミャ。」
「何ですか、シュラ様? 何を言っているのか分かりませんが。」
「激しく同意と言っているのさ。サガは真面目で仕事熱心だが、空気を読まない。いや、読めないが正しいかな。平然と私を執務要員に加えてしまいそうだからね。」


アフロディーテ様の後に続き、シュラ様を抱っこしたまま執務室の中へと戻る。
部屋に残っていたアイオリア様は応接ソファーへと移動していて、背もたれの縁を綱渡りのようにヒラヒラと歩いていた。
サガ様達は黙々と書類の処理を続けている。


「サガ。私達は磨羯宮に戻る事にするよ。」
「もう戻ってしまうのか?」
「いつまでもココに居る訳にはいかないからね。さ、アイオリア、帰ろうか。」
「ミミィッ。」
「あぁ、ちょっと待ってくれ。最後に一撫でを……。」


ペンを置いたサガ様が、アイオリア様を抱き上げたアフロディーテ様の傍へと慌てて近付いてくる。
その腕からアイオリア様を受け取ると、しっかりと腕に抱えて頭を撫でるサガ様。
一方、こちらの方へと顔を背けているアイオリア様は、非常に複雑な表情をしている。
まぁ、そうですよねぇ。
どうせ抱っこして撫でられるのなら、女官達とか可愛い女の子の方が良いですよねぇ。


「サガばかりズルいですよ。」
「そうだぞ。俺達も抱っこはしたい。」
「あ、じゃあシュラ様をどうぞ。」
「ミャッ?!」


羨むような、妬むような顔をしてサガ様を見遣るムウ様とアルデバラン様に、私は腕の中のシュラ様を差し出した。
アイオリア様ばかりに我慢を強いるのは可哀想ですからね。
バタバタと暴れても駄目ですよ。
皆様、平等に抱っこと撫で撫でをしたいんですから。


「猫というのは良いものですね。サガだけでなく私達も十分に癒されます。はい、アルデバランもどうぞ。」
「本当にそうだな。こうして撫でたり、遊んだり、見ているだけでも癒される。やはりココで猫を飼う事を真剣に考えるべきだろう。」


うんうんと一人で頷くアルデバラン様は、直ぐにも良い猫を探しにいかねばと、心の中の決意をブツブツと口に出して呟いている。
ふとサガ様の方へ目を向けると、うっとりした顔をしてアイオリア様に頬擦りを繰り返していた。
猫ちゃんの大きく見開かれた緑色の瞳が、助けを求めて訴え掛けてくる。
あぁ、これはいけない。
私は慌ててサガ様の腕からアイオリア様を没収した。


「ああっ! 私を置いて行かないでくれ!」
「大袈裟だよ、サガ。さぁ、現実逃避していないで執務に戻った戻った。」
「ううっ……。」


程度の違いはあれど、サガ様とアイオオロス様は本当にソックリな反応をしますね。
思わず零してしまった私に、サガ様が思い切り顔を顰めた。
それを見ていたムウ様、アルデバラン様、アフロディーテ様、そして、猫ちゃん達までも、ケラケラと笑い出していた。





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