ガタガタガタッ!
ゴトゴトゴトッ!


「アンヌ……。バスケットが物凄い勢いで揺れているのだが……。」
「仕方ありません。中でお二人が暴れていますので。でも、ちょっとの間だけですから。」


この狭い空間に閉じ籠められているのだから、もがくのも無理はない。
しかも、いつも無駄に張り合ってばかりいるお二人が、こうも密着する状況でギュウギュウ詰めにされているのだから、余計に。


「さあさあ、大人しくしてください。一瞬の我慢ですからね。」
「暴れれば暴れる程、キミ達の嫌がるこの時間が長引くだけだよ。大人しくならなきゃ出発出来ないんだから。」


バスケットの蓋の向こう側から、「シャーシャー!」と気の立った唸り声が聞こえていたが、直ぐに静かになった。
いつまでも反抗を続けるよりも、ちょっとの間だけでも我慢する方を選んだのだろう。
賢明な判断です。
そうじゃないと、いつまでも外に出してもらえなくなりますもの。


「じゃ、大変だろうけど執務頑張ってね。」
「アフロディーテこそ、我が儘猫の世話を、しっかりしてくださいね。野放しになれば、非常に危険そうですから。」
「野放しにはしないさ。それこそ、本当に聖域の危機になりかねないからね。」
「アンヌ。後で、またシュラとアイオリアの頭を撫でに行っても良いだろうか……。」


サガ様……、未練たっぷりですね。
私としては構いませんけれど、途中で執務を抜け出せるのでしょうか?
夕方前にちょっとだけだ、そう言い張るサガ様ですが、それまでお二人が猫ちゃんの姿のままかどうか、保証は出来ませんよ。
そろそろ元の姿に戻るのではないかと思っているのですが。


そんな遣り取りの間に、さっさと戻りたいアフロディーテ様に抱き上げられ、一瞬の内に教皇宮から十二宮の階段へと飛び出していた。
「ひゃああ!」と叫んだのは気のせいか、ハッと息を吸い込んだ時には、見慣れた磨羯宮の前に止まっている。


「ぜ、ぜいぜい……。」
「何でキミの息が上がっているんだい、アンヌ。走ったのは私なのに。」


そうは言っても、負荷が凄まじくてですね、息も出来ないですし、身体に掛かる圧迫感が凄いですし、息も上がってしまうのは仕方ないかと。
何度経験しても、こればかりは慣れそうにありません。
やはり一般人の身体に、このスピードは無理があるのだろう。


「シャー!」
「キシャー!」
「ほら、アンヌ。煩い猫共が早く出せと暴れているよ。プライベートルームに入ろうか。」
「あ、はい。」


慌てて部屋の中へ移動する。
光が遮断されて薄暗い宮内から、明るく陽の差す部屋の中へと。
窓から入る日光に目を瞬かせながら、床に置いたバスケットの蓋を開く。
刹那、弾丸の如くに飛び出した二匹の猫ちゃんが、目にも止まらぬ早さで部屋の中を駆け出した。


バタバタバタッ!
グルグルグルッ!
ドドドドドッ!


「こ、こら! お二人共、そんなに走り回っちゃ駄目ですよ!」
「ミャー!」
「ミミー!」
「これはストレス発散の運動かな。余程、二人纏めてバスケットに閉じ籠められていたのが腹立たしかったんだね。」
「もう! 大人しくしてください!」


ただ走り回っているだけなら兎も角、途中、ソファーからテーブルから、あらゆるものに飛び乗って蹴り飛ばしてと、文字通りの大暴れっぷり。
私は床に落ちた雑誌を拾い上げながら、深い溜息を吐いた。



→第12話へ続く


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