「おお、サガ。起きてきたか。」
「すまない。随分と長く休んでしまった。」


両脇に猫ちゃん二匹を抱えたまま執務室へと戻ってきたサガ様は、応接テーブルに並べられたランチと共に迎い入れたムウ様達に向かって、申し訳なさそうに眉を下げた。
そのままソファーの空いた場所に腰を下ろし、フウと息を吐く。
腕に抱えたシュラ様達の事は綺麗さっぱり忘れているのか、解放する気は全くなさそうだ。


「全然、長くなどありませんよ。寧ろ短いくらいです。ちゃんと休めたのですか、あの程度で?」
「少々頭はズキズキするが、身体は軽い。完全とは言えないが、回復はしていると思う。」
「頭がズキズキ、ねぇ……。」


アフロディーテ様の視線は、サガ様の後頭部の巨大タンコブに釘付けだ。
そ、そんなに凝視しない方が良いと思いますけれど。
サガ様にタンコブの事を気付かれてはマズいでしょうから……。


「シャー!」
「キシャー!」
「サガ……。シュラとアイオリアが暴れている。離してやった方が良いのではないか?」
「む? 何故、暴れているのだ、お前達? 私の傍に居たいのではなかったのか?」
「どうして、そう自分に都合の良い結論に辿り着くのか、そっちの方が疑問だよ。」


呆れた顔で、呆れた声を出すアフロディーテ様。
だが、そんな彼の言葉の意味が全く分からないといった風に、目を丸くして首を傾けるサガ様。
本当に天然なのですね、サガ様は。
ムウ様とアルデバラン様が苦笑しながら彼を見守っている。


「ミャッ!」
「ほら。やっと解放されたって喜んでるよ、シュラが。」
「ミミッ!」
「そうなのか? 私は楽しさでハイになって、それでバタバタと落ち着きがないのかと思っていたのだが。」
「ミミャッ!」


それは違う、絶対にないとでも言いたげに鳴き声を上げ、サガ様の背を上り始める黒猫のシュラ様。
報復のつもりなのか、またもや後頭部の巨大タンコブを狙ってパシパシと猫パンチを繰り出し始める。
一方のアイオリア様は足下へと降りて、法衣の裾から覗く足首を狙ってガシガシと爪で引っ掻き始めた。


「サガ。こういう事は、あまり言いたくはないんだけどさ……。」
「何だ、アフロディーテ?」
「ご都合主義じゃないとしてもだ。あまり天然が過ぎると、アイオロスと同じ末路を辿るぞ。」
「なっ?! アイオロスと同じなどと、そんな事は……!」
「調子に乗っていると、猫達に嫌われてしまうという訳ですか。可愛さ余って、ついつい可愛がり過ぎてしまいがちですが、強要はいけないと、そういう事ですね。」
「……っ。」


愕然と目を見開くサガ様。
どうやら自覚はあった模様で、プルプルと肩を震わせている。
強心臓で自己中街道まっしぐらなアイオロス様なら兎も角、繊細そうなサガ様を、こうも責めるのは可哀想です。
私はサガ様にじゃれ付きという名の攻撃を仕掛けているシュラ様とアイオリア様を抱き上げて引き離すと、自分の左右に座らせて、この話をいったん終わりにした。





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