その時だった。
何の前触れもなく突然、ムクリと身体を起こしたサガ様。
背中に乗っていた猫ちゃん達がバラバラと床に払い落とされるが、華麗に着地した彼等は、起き上がったサガ様の膝の上に再び飛び乗った。


「アンヌ? 私は……、どうしたのだ?」
「サガ様、おはようございます。良く眠れましたか?」
「私は寝ていたのか?」


正確に言えば、寝ていたのではなく、気絶していたのですけれど。
それを伝えてしまうと、後々、面倒な事になりそうなので、黙って首を上下に振って肯定した。
寝ていたんですよ、良〜く寝ていたんです。
夢も見ない程にグッスリと寝ていたんです、サガ様は。


「そうか……。それにしても、私は仮眠室に移動した覚えがないのだが、寝落ちた私を誰かが運んでくれたのだろうか?」
「あの、えっと、アイオロス様が運んでくださったようです。」
「アイオロスが……。」


グッと眉を寄せたサガ様の膝上では、アイオリア様がミャンミャンと揺れる髪にじゃれ付いている。
一方、黒猫のシュラ様は、背中側から肩の上へとよじ登り、頭の大きなタンコブを目掛けて、再びペシペシと猫パンチを繰り出している。
この人(猫?)、サガ様に何か恨みでもあるのでしょうか。
相手の弱った箇所を執拗に攻撃するとは、余程の恨み辛みがあるとしか思えない。


「アンヌ、何故、アイオリア達がいるのだ?」
「御迷惑をお掛けしているお詫びに、お昼ご飯を作ってきたんです。ただシュラ様達を磨羯宮に置いてくるのは何かと問題があるので、連れて来てしまいました。」
「昼ご飯……。もうそんな時間なのか。随分と長い時間、睡眠を取ってしまったのだな。」


気絶していた時間が、睡眠を取っていたのと同等の休息になれば良いのですけれどね。
まぁ、でも、目の下のクマが消えているので休めたという事にしておきましょう、うん。


「向こうにランチの用意が整っていますから、行きましょう。ムウ様とアルデバラン様とアフロディーテ様も待っています。」
「そうか、皆が待っているのならば、ココでノロノロしている訳にはいかんな。それにしても……、頭がズキズキする。仕事のし過ぎだろうか。」
「ミャッ!」
「シュラは私の頭痛を心配して、頭を撫でてくれているのか。優しいな。」


いえ、違います、サガ様。
シュラ様のは、傷口に塩を擦り込む行為ですから。
タンコブに猫パンチを食らわせているだけですから。
そもそも仕事のし過ぎではなく、アイオロス様の強烈な一撃のせいですから。
などとは言えないので、笑みを浮かべて誤魔化す私。
多分、物凄く引き攣った笑顔になっていると思う。


「では、行こうか。」
「ミッ?!」
「ミャッ?!」


サガ様は素早くアイオリア様とシュラ様を両脇に抱え込むと、そのままスックと立ち上がり、スタスタと仮眠室を出ていく。
猫ちゃん達は手足をバタつかせて暴れるが、ビクともしないのは、流石にサガ様だ。
願うのは、サガ様が鏡を見る事なく、そのまま執務に戻ってくれる事。
あの巨大なタンコブだもの。
鏡を見てしまえば一発で気付かれてしまうだろうから……。





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