それから……。
アフロディーテ様はムウ様とアルデバラン様に加わって、少しの間だけ執務のお手伝いを。
私は給湯室でお湯を沸かし、簡単なスープを作ってランチの用意。
その間、猫ちゃん達は執務室の中で自由に過ごしていた。
それを放し飼いと言うのかもしれないけれど。
一応、アフロディーテ様が神経を尖らせ、彼等が隙を見て部屋を出ていかないよう注意を払っていたから大丈夫。
もし突然に誰かが執務室を訪れても、デスマスク様の飼い猫だと言い張る事に決めているのだ。


「コラ、シーちゃん。そんなところに上っては駄目でしょう。」
「ミャッ。」
「シーちゃん、か……。やはり違和感があるな。あの強面で厳つい男の呼び名とは、とても思えないよ。名前が可愛らし過ぎる。」


仕方ありません。
以前の時にも、シュラ様は『シーちゃん』、アイオリア様は『リアちゃん』と呼んで、正体がバレないようにしていたのですから。


「良いではないですか。猫でいる間くらいは可愛い名前で呼ばれても。もし私だったら、アリエスから『アリちゃん』になるでしょうね。」
「俺ならば、アルデバランから『アルちゃん』か。ハハハ、似合わんな。」
「では、アフロディーテなら……。」
「止めてくれ。私に猫の名を付ける必要はない。不吉だろう。本当に猫化してしまったら困る。」


その見惚れるばかりの美貌を崩して、思い切り嫌な顔をするアフロディーテ様。
何故か猫ちゃん達が、その足下、デスクの下に潜り込んで、彼の足に猫パンチを食らわせ始めた。
不本意で猫になってしまった自分達の気持ちを考えろ、そう文句を言いたいのだろう。


「さあ、ランチの用意が出来ましたよ。一旦、手を止めてお昼ご飯にしましょう。」
「助かる、アンヌ。たっぷりスタミナを摂らんと身体が持たないからな。」
「デスクに座りっ放しの執務仕事なのにですか、アルデバラン?」
「座り仕事だから余計にだ。身体を動かす任務より、こっちの方が余程疲れる。」


クスクスと笑うムウ様と私。
そして、猫ちゃん達を追い立てて、応接テーブルに着く。


「あ、サガ様はどうしましょう?」
「そうですね。そろそろ起こしても良い時間でしょう。お昼ご飯を食べて、午後からの執務では、彼にも戦力になってもらわないと。」
「では、起こしに行ってきます。シーちゃん、リアちゃん。」
「ミャッ!」
「ミイッ!」


私は猫ちゃん二匹を両手で抱っこし、執務室の横にある仮眠室に向かった。
ドアは施錠されていない。
中を覗くと、頭に大きなタンコブをこしらえたサガ様が、細いベッドの上にうつ伏せに寝転がっていた。
う〜ん、確かにコレ、眠っているというよりは、気絶したまま放置されていると言った方が当たっている……。


「ミミャー!」
「ミミー!」


細く開けたドアの隙間から、勝手に中へと突進していくシュラ様とアイオリア様。
目指す先はサガ様の広い背中。
飛び乗って踏み付け、その上でジャンプまで始めている。
挙げ句、大きく腫れ上がった頭のタンコブに、ペシペシと猫パンチまで。
あぁ、何て事を……。


サガ様に恨みでもあるのでしょうか、この猫ちゃん達は。
ここぞとばかりに、やりたい放題です。





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