ムウ様は、シュラ様のデスクにも何か書類が残ってやしないかと引き出しの中を探っている。
が、どうやら何も出ては来ないようだ。
一応、執務・任務に対しては生真面目ですからね、シュラ様。
自分の部屋の中ではアレでも、仕事に対してはキチッとビシッとしていますから。
例え、部屋が片付けられなくても、乱雑で大雑把でいい加減で適当な性格でも、仕事では完璧主義ですから。


「流石はシュラと言うべきでしょうかね。」
「ミミャッ!」
「当然だって言っているよ、ふんぞり返って。本当に生意気な黒猫だよね、キミは。」
「ミャッ!」


はいはい、飛び掛からないの。
ちょっと短気過ぎですよ、シュラ様。
私はシュラ様の隙を見て掬い上げるように捕まえると、そのまま抱っこをしてしまった。
この悪戯っ子は放っておくと何を仕出かすか分からないので、こうしてシッカリと押さえておいた方が安全です。


「ミギャッ!」
「はいはい、大人しくしてくださいね。」
「ミギャギャッ!」
「大人しくしてくれないと、お耳グイグイ引っ張り刑に処しますよ。」
「ミャ……。」


それを聞いて身を小さくするシュラ様。
お仕置きされるのが嫌なら、最初から良い子ちゃんにしていてください。
溜息を吐きつつ、耳は引っ張らずに頭を撫で撫でする私。
ゴロゴロと喉を鳴らすシュラ様。
呆れ顔で見ていたムウ様は、両手でシュラ様の両頬をビロンと左右に引っ張り伸ばした。


「フギャッ。」
「本当に我が儘ですね、シュラは。さぁ、いつまでもアンヌに擦り寄っていないで、こっちへいらっしゃい。」


半ば強制的にシュラ様を自分の腕の中に引き取ると、そのままアルデバラン様の方へと近寄っていくムウ様。
そこでは書類に向かうアルデバラン様を、デスクの上に座るアイオリア様が鳴き声と手振りでアレコレ誘導していた。


「ココはこれで良いのか?」
「ミイッ。」
「ならば、ココもこうで構わんな。」
「ミミッ、ミイッ。」


アイオリア様はブンブンと首を振り、右の前足で横のメモの端をタシタシと叩く。
どうやら、メモの内容を反映させろという事らしい。
なる程、そういう事かと、アルデバラン様が再びペンを走らせた。
その書類の中身を、首を伸ばして覗き見たアイオリア様が、ウンウンと満足げに頷いている。


「いつ何時こういう事が起きるとも限りませんからね。報告書は帰還後、迅速に仕上げて提出しなければ。良い勉強になったでしょう、アイオリアは。」
「それに関してはシュラを見倣うべきだな。」


ガハハと笑うアルデバラン様に、ボスボスと頭を叩かれ、明らかに不貞腐れた表情を見せる猫ちゃん。
そのままドカリとデスクの上に伏せをしてしまった様子から、かなりの不機嫌になってしまったと分かる。
負けず嫌いですものね、特にシュラ様が相手の時には。


「ミャッ。」
「ミイッ。」


どうして無駄に張り合おうとするんでしょう、このお二人は。
人の姿でも猫の姿でも、どちらにしても仲が良い筈なのに、何かにつけて自分が優位に立とうとするのは何故なのか。


書き上がった報告書を手に、アルデバラン様が立ち上がる。
目を細く尖らせたまま伏せっていたアイオリア様も、流石に申し訳ないと思ったのか、素早く身を起こして目の前のアルデバラン様にペコペコと頭を下げた。





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