「で、サガは、まだ気絶しているのかな?」
「おや、知っていたのですか?」


執務は一旦、休憩にしよう。
という事で、応接テーブルに移り、猫ちゃん達と戯れながらの近況報告を始める。
シュラ様もアイオリア様も、磨羯宮以外の場所に来られたのが楽しいのか、あっちへこっちへとウロウロ歩き回っている。
ソファーに飛び乗って、アフロディーテ様と私の間に座り込んだかと思うと、直ぐに背もたれに移動して平均台のようにフラフラと渡り歩いてみたり。
アイオリア様はアルデバラン様が手にした猫じゃらしに、ミャンミャンとじゃれ付いている。


「アイオロスが磨羯宮に寄ったんだよ。」
「そうでしたか。では、アイオロスは無事に自宮で休んでいるのですね。」
「無事に……、でしょうかね?」
「ん? どういう事だ?」


立ち寄った磨羯宮のソファーで、そのまま寝落ちてしまった事を説明する。
一応、留守番とアイオロス様の見張りを兼ねて、黒猫のカプリコちゃんを番犬ならぬ番猫として残してきた事も付け加えて。


「人馬宮まで持たなかったか。昨夜は戦場のようになっていたと聞くし、そうなっても、まぁ仕方ないだろう。」
「で、サガの様子は?」
「見事に一発、後頭部に食らっていますから、まだ暫くは起きないと思いますよ。流石はアイオロスです。書類に集中していて油断していたとはいえ、ああも簡単にサガを気絶させる事が出来るとは。」


感心するムウ様の横で、感嘆の唸り声を上げたアルデバラン様。
それに対して、ビクッと反応したアイオリア様は、猫じゃらしから離れて部屋を走り出した。
直ぐに近くのデスクに飛び乗ったのだが、その机は確か……。


「アイオリアのデスクじゃないか。」
「ミイッ。」
「そこに何かあるのですか?」
「ミイィッ。」


デスクの上に伏せたアイオリア様は、その体勢から右の前足を伸ばして、デスクの一番上の引き出しをペシペシと叩いてみせる。
そこに何か入っているのでしょうか?


「これは……。報告書だな、書き掛けの。」
「ミイッ。」
「しかも、提出期限が今日までのようだね、これ。」
「ミイッ。」
「まさか、代わりに仕上げて欲しいとか、思っているのですか?」
「ミイィッ。」


どうやら、そのまさかのようですよ。
可愛らしくチョコンと座って、可愛らしく大きな目で見上げて、挙げ句、可愛らしく腕にスリスリと顔を擦り付けている様子は、完全に分かっていて媚びを売っていますもの。
しかも、それを引き受けてくれそうなアルデバラン様に向けて。
まさかアイオリア様が、そんなにしたたかだったとは驚きです。


「仕方ない。あとホンの僅かのようだし、代わりに仕上げてやろう。」
「ミミッ、ミイッ。」
「甘やかし過ぎじゃないのか、アルデバラン。こんな大変な時に。」
「しかしな。仕上げて提出したくとも、本人がこの姿では何も出来んのだから、可哀想であろう?」


そう言って、アイオリア様をヒョイと抱き上げたアルデバラン様は、目尻を下げに下げ捲って、猫ちゃんに頬擦りをする。
分かっていると思いますが、その猫ちゃん、アイオリア様ですよ。
分かっていると思いますけど。


「それはキミが言える立場ではないだろう、アンヌ。キミが猫共を抱っこしている時は、あれ以上にデレデレだぞ。」
「そ、そんな事は……。」


ないとは言えないのが悔しい。
本当に罪な動物ですね、猫ちゃんって……。





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