アルデバラン様の右の肩から左の肩へ。
そして、頭の上に前足を伸ばそうとしたところで、バランスを崩してズルズルと大きな背中を滑り落ちていく黒猫ちゃんことシュラ様。


「ミニャニャ……。」
「シュラ様……。」


腰と椅子の背凭れの間に挟まり込んでしまい、前足をワタワタとバタつかせている。
そんな姿を呆れて見ている私と、小さく溜息を吐くアフロディーテ様。
直ぐに、またアルデバランの背中を器用に上がっていき、肩の上でニャオンと一鳴きする。


「シュラは猫だと随分とワンパクですね。逆にアイオリアは、こんなに大人しいなんて、面白いものです。」
「アイオリア様は猫になると、とても臆病になってしまうみたいです。」


ムウ様の膝に乗ったアイオリア様は、彼の両腕に挟まれた間で、両の前足をデスクに乗せてチョコンと座っている。
まるで小さな子供を膝に座らせているみたいで、ほのぼのとした雰囲気に見えて面白い。
頭をゆっくりと撫でられている様子は、とても気持ち良さそうだ。


「そう言えば、シャカはどうしたんだい?」
「あぁ……。シャカなら自分の宮に戻ったぞ。」
「え、戻った?」
「えぇ、そうです。アルデバランが様子見に来たと思ったら、『君が来たなら、もう私は用済みだな。』とか言って、勝手に戻ってしまったのですよ。」


腹が立つ以前に呆れ果ててしまいました。
そう言って笑みを浮かべるムウ様から発せられた不穏な空気を察してか、アイオリア様の身体がビクッと小さく震えた。
恐る恐る振り返って見上げてくる、その小さな頭を、ムウ様は更に極上の笑みでもって優雅に撫でる。
怖い……、怖いです、ムウ様……。


「ミミャッ。」
「あ、コラ! シュラ様、駄目ですよ!」
「いい、いい、アンヌ。俺なら構わんぞ。」
「ミャッ!」


アルデバラン様の肩の上で、大人しくしていると思っていたのに。
油断していると、また直ぐ調子に乗るんだから、シュラ様は。
今は、その肩の上から伸び上がって、アルデバラン様の頭頂部の髪をワシワシに掻き回している。


「シュラは良い毛並みをしている。しっとり艶々の高級絨毯のような肌触りだな。」
「ミャッ。」


髪をクシャクシャにして満足したのか、今度は自分の顔をアルデバラン様の頬やら首筋やらに擦り付けている。
角度を自在に変えて擦り付けながら、左右の肩の上を行ったり来たり。
ホント自由気儘ですね、シュラ様。


「シュラの自由勝手さに比べると、アイオリアは本当に大人しい。これが、あの猪突猛進で人の話を聞かない男と同じなのかと疑ってしまう程です。」
「ミイッ!」
「ムウ。余り刺激をすると、雷電的な攻撃がくるから気を付けないと。猫になっても技は出せるからね、彼等。」
「そうなのですか? しかし、こんなに可愛い猫が繰り出すライトニングボルトなら、多少は食らっても良い気がします。」


そう言って、クスクスと笑ったムウ様が、アイオリア様を抱え直して、頭から背中をゆっくりと撫でる。
こうして見ると、あれですね。
ムウ様もアルデバラン様も、すっかり猫ちゃん聖闘士に魅了されてしまっていますね。





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