11.教皇宮で大暴れ



「コラコラ、ちゃんと中に入っていてください。」


大きなバスケットの中には、サンドイッチの入った小さな容器が一つ。
それに加えて、スラッと猫ちゃんとムッチリ猫ちゃんが一匹ずつ。
そのシュラ様とアイオリア様が、交互に頭を出しては引っ込めてを繰り返している。
もぐら叩きの真似事ですか、楽しそうにヒョコヒョコと……。


「コラ、いい加減にしろ。」
「ミャッ?!」
「ミイッ?!」
「キミ達が大人しくしないと、いつまで経っても出発出来ないぞ。」


見ていたアフロディーテ様が、呆れた顔をして猫ちゃん達の頭をグイグイとバスケットの中へと押し込んだ。
当然、ギャーギャーと声を上げて暴れる猫ちゃん達。


「こんなバスケットの中に入れないで、腕に抱いていけば良いのに。」
「荷物がなければそれでも良いのですが、お弁当の他に猫ちゃん二匹もだなんて、流石に抱えきれませんので。」
「そうか、なら仕方ないね。」


暴れる猫ちゃんは無視して、アフロディーテ様が強引にバスケットの蓋を閉める。
中からは未だギャーギャーと聞こえる猫ちゃん達の声。
サンドイッチが滅茶苦茶になってないか非常に心配です。


「じゃあ行こうか、アンヌ。」
「はい、お願いします。」


私はガタガタと揺れる大きなバスケットを抱え、ソファーに突っ伏して眠るアイオロス様を振り返り見た。
すると、彼の代理のつもりか、その大きな背中の上に座る黒猫のカプリコちゃんが、「ミャーン。」と一つ鳴き声を上げる。
アフロディーテ様と私で、カプリコちゃんの頭を一回ずつワシワシと撫でてから、宮の外へと出た。


未だ慣れぬ姫抱っこに身を固くする私。
ギュッと抱えるバスケットの中からは、猫ちゃん達のカタカタという身動ぎと、フンフンという息遣いが聞こえてくる。
一瞬……、うん、ホンの一瞬の事だから。
そう自分に言い聞かせている間に、グランと身体と頭が揺れて、気付けば既に教皇宮の前にいた。


「はぁ……、緊張しました。」
「危ない事は一切ないよ。そんな固くならなくたって大丈夫なのに。」
「そうは言いましても、苦手なものは苦手なので……。」


そんな話をしている間に、黄金聖闘士の執務室へと辿り着く。
アフロディーテ様を先頭に中へ足を踏み入れると、執務に没頭していたムウ様とシャカ様が顔を上げた。
いや、シャカ様ではない、アルデバラン様だ。
いつの間に交代したのだろうか。


「おお、どうした?」
「アンヌが顔を出したいって言うからね。」
「御迷惑をお掛けしているので、せめて差し入れでもと思いまして。それと……。」
「ミャッ!」


私の言葉が終わらない内に、バスケットの蓋を頭で押し上げて、自力で外へと飛び出したシュラ様。
次いでアイオリア様もヒョイとバスケットから出ていってしまった。


「あ、こら! 勝手に出たら駄目じゃないですか!」
「おや、これが噂の黄金聖闘士猫ですか? 人の姿の時と違って随分と可愛らしい。」
「おおっ、元気いっぱいだな。」
「ミイッ!」


金茶猫のアイオリア様はムウ様の膝の上に。
黒猫のシュラ様はアルデバラン様の大きな背中に飛び掛かり、肩から頭、そして、また肩へと、好き勝手に動き回っている。
それを嬉しそうに許容し、されるが儘になっているアルデバラン様は、ニコニコと笑いながら肩のシュラ様に手を伸ばして、その背中を豪快にワシワシと背中を撫でた。





- 1/11 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -