「アイオリア〜。徹夜で頑張った俺にごほ〜び〜。モフモフさせてくれ〜。モフモフ〜。」


フラフラと近寄ってくるアイオロス様の標的は、どうやらアイオリア様のようだ。
私の膝の上でビクリと身体を強張らせ、緊張で固まっている。
この怖いもの知らずな猫ちゃんを、こうまで恐怖に慄かせる事が出来るなんて、流石はアイオロス様。


「ミッ! ミイィッ!」
「アイオロス……。こう言っては何だが、アイオリアが竦んでいるぞ。幾ら元が黄金聖闘士で、自分の弟だとしても、可愛い愛玩動物を怖がらせるのは、どうかと思うのだが……。」
「大丈夫、大丈夫。何も怖い事はしないから。ただ俺の散々に削られて消費し捲った精神を、ほっぺたスリスリで癒してくれれば良いだけだから。」


相変わらず他人の言う事など聞かないアイオロス様は、貼り付いた笑顔、そして、フラリと幽霊のように腕を伸ばして、アイオリア様へと一歩ずつ近付いてくる。
何処ぞのホラー映画よりも怖いです、その笑顔の威圧感。
う〜ん、これは少しの間だけでも、アイオリア様に我慢してもらうのが良いかもしれない。
じゃないと、自分の欲(猫ちゃん可愛がり欲)が満たされるまで、ココで猫ちゃん達を追い回し、恐怖の鬼ゴッコを繰り広げそうですから……。


「という訳なので、アイオリア様。ちょっと耐えてください。」
「ミミッ?!」
「大丈夫、頬にスリスリするだけだから。怖がらな〜い、怖がらな〜い。」
「いや、その笑顔が激しく怖いよ、アイオロス。」
「ミ、ミイィィ……。」


半泣きのアイオリア様に両手を合わせて合掌し、アイオロス様の腕の中へと引き渡す。
ここは心を鬼にしてアイオリア様を預けなきゃ、先には進めないもの。
「何の先に進むんだ?」と聞かれたら、何とは答えられませんが……。


「アイオリア〜。ほら、俺の広い肩に乗って。」
「ミ、ミィ……。」
「そこからほっぺたにスリスリだよ。こう顔から身体にかけて、俺の頬へと擦り付けるように。」
「ミィ……。」


頬にスリスリだけと言いながら、随分と要望の多い事。
でも、無理に抱き締めたりとか、ハチャメチャに撫で回したりとか、アイオロス様からの強烈な突進がないのだから、今までに比べたらマシではあるけれども。
今朝はアイオリア様からの自主的な甘えを御希望のようだから、猫ちゃんとしてはストレス半減かしら。
とはいえ、それも強制なのですけどね。


と、横からクワワッと暢気な欠伸が聞こえてきた。
他人事だと思っているのか、我関せずなシュラ様。


「悠長にアフロディーテ様の膝の上で欠伸などしてないで、シュラ様も自主的にアイオロス様に甘えに行ったら如何ですか?」
「ミャッ?!」
「確かに、自分は関係ないって顔しているのは良くないよね。」
「ミミャッ?!」


私はシュラ様を抱き上げると、そのままアイオロス様に近寄っていって、アイオリア様が乗っているのとは逆の肩にギュギュッと押し付けた。
途端に、パアアッと明るさを増し、更に笑顔が崩れるアイオロス様。
落ちてなるものかと必死に肩に捕まる黒猫ちゃんに、彼は自ら顔を寄せ、頬を押し付けて、幸せそうに口元を緩めた。





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