「ミギャッ! ミギギャッ!」
「煩いな、いちいち。ちょっとくらい黙っていられないのかい?」


アフロディーテ様がブラシを身体に当てる度に、喚き声を上げるシュラ様。
ほぼ無理矢理に彼の膝の上に乗せられて、強引に組み伏せられてブラッシングされている、その状態。
誰がどう見ても気持ち良さそうには思えない。
というか、動物虐待にしか見えないんですが……。


「あの、もう少し優しくブラシを当てた方が良いのでは?」
「ミギャッ!」
「そうかな? 少し強いくらいが良いんじゃないのかい、アンヌ?」
「いえいえ、猫ちゃんの皮膚は敏感ですから。ほら、このくらいで……。」


アフロディーテ様からブラシを奪い、シュラ様の短い毛に優しくゆっくりとそれを通す。
途端にゴロゴロと気持ち良さそうな声を上げ出す黒猫ちゃん。
本当に正直ですね、シュラ様は。


「猫になってもムッツリスケベなのだな、シュラ。」
「ミギャギ!」


不機嫌に頬を膨らませ、アフロディーテ様はシュラ様のピンと尖った耳を摘む。
この黒猫ちゃんは、耳が弱点だ。
おかしな鳴き声を上げ、更には身を捩らせて振り払おうとするが、膝の上に押さえ付けられていては逃れられる筈もない。
ミギャミギャと嫌そうな声を上げ続けている。


「お〜、朝から元気だなぁ。」
「おや、アイオロス?」
「おお、まだ猫のままなのかぁ。何だかなぁ……。」
「キシャー!」
「シャー!」


猫ちゃん達との朝の戯れの最中、突然、現れたのはアイオロス様だった。
その姿を見た途端、臨戦態勢になるシュラ様とアイオリア様。
歯を剥き出しにして、毛を逆立て、敵意を露わにしている。
う〜ん、一晩経つと、一度薄れた恐怖心も綺麗にリセットされてしまうんですね、この猫ちゃん達は。
それにしてもアイオロス様、何だか目がシパシパ、ショボショボしてらっしゃいますけど、どうしたのでしょうか?


「アイオロス。瞼が腫れているように見えるんだが、どうしたんだい?」
「あぁ、徹夜したからね。徹夜で執務、徹夜で事務処理。アハハ。」


アハハじゃないと思いますけど、アイオロス様。
話によると、新米神官の一人が、教皇(というか教皇補佐)の判断が必要な書類を『うっかりと』回すのを忘れてしまっていたそうで。
しかも、ちょっとやそっとの量ではなく、大量に。
この大変な時にやってくれちゃって、あの神官、勇気あるなぁ。
などと笑顔で言い放つアイオロス様の怖い事、怖い事。
猫ちゃん達の尻尾の毛が、更にゾワゾワと逆立っていく。


「という事は、サガも? 寝てないのかい、あのワーカホリック。」
「大丈夫、サガは寝てる。書類に没頭しているところを背後から殴って、仮眠室のベッドに寝かせてきたから問題ない。」
「いや、問題あるだろう、それ……。」


寝ているんじゃなくて、気絶してるんですよね、それ。
それで睡眠を取った事になるんですか?
返ってサガ様のダメージは大きいのではないのですか?


「今はムウとシャカがヘルプに入ってくれている。だから、俺も一休みしようと思って、宮に戻るところだ。」
「すまないね、戦力になれなくて。」
「構わないさ。アイオリア達の面倒をみるのも大事だからね。」


そう言って、猫ちゃん達にニコリと微笑み掛けたアイオロス様だが、それが余計に恐ろしかったのか、猫ちゃん達の威嚇は更に増した。
でも、そこはアイオロス様なので、全く気付いていないというか、気にしていないというか。
フラフラとした足取りで距離を詰めてくるものだから、シュラ様とアイオリア様の警戒心が一気にマックスまで上昇した。





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