「それにしてもシュラ様。これを買う時、店員さんに変な顔されなかったんですか?」


男の人が一人で女物の水着を買いに来るなんて、絶対に店員さんは吃驚してる筈。
いや、吃驚よりも、変な人だと思ってるに違いないわ。
しかも、十人並以上の男前、モデルや映画俳優にも勝るとも劣らない美丈夫なシュラ様が『女物の水着を物色』だなんて、その場面を想像しただけでも頭痛と目眩がしてくる。


「最初は遠巻きに観察されていたが、妻の水着を選びに来たと告げたら、喜んで接客してくれたぞ。」
「でも、その当の妻がいないんじゃ、訝しがられるでしょう、普通。」
「あぁ、それなら『俺の妻は堅過ぎるくらい真面目なので、アイツに選ばせると恐ろしく時代遅れな水着を購入しかねん。』とボヤいたら、ノリノリでお勧めの水着を持ってきてくれてな。これはどうのとか、あれはどうだとか、色々と教えてくれた。」


あああああ!
きっと、その店員さん達は、この超絶格好良いシュラ様の隣に並ぶのだから、スーパーモデル並の美女を想像したんでしょうね!
だから、こんな有り得ないような際どい水着ばかりなんだわ!


「アンヌは、これだけ目立つ容姿なのに、身に着けているものが地味過ぎる。折角の美人が台無しだ。」
「わ、私は、もっとこう目立たずひっそりと生きていきたいんです。だから、そういう目を惹くものに腕を通すのは勘弁させていただきたいんです。」
「お前な……。それは俺と付き合う事になった時点で、無理な話だと思うぞ。」


確かに。
黄金聖闘士の恋人というだけで、注目度は数倍増しですもの。
でも、だからこそ、出来るだけ他人の妬みや恨みを買わないように、目立たなくしていたいのに。
大体、こんな私には似合わない水着を着て、シュラ様の横に並ぶなんて、不釣合いにも程がある。
しかも、私服姿ならまだしも、水着姿のシュラ様だなんて、いつも一緒にいる私ですら直視出来ないくらいの破壊力を持っているに違いなく。
一流スポーツ選手も真っ青な見事な体躯に、あの端正でクールなルックス。
溜息の一つや二つ、当たり前に零れる程の格好良さだもの。


「こんなの着て隣に並んだら、恥を掻くだけです。」
「アンヌ。どんだけ自分を卑下したら気が済むんだ? いい加減、自分の魅力を理解しろ。」


そう言って、そこに広げられていた水着の内から、何かとアレコレ透けそうなグレーのビキニを掴むと、シュラ様はそれを無理矢理、私の手に握らせた。
一体、何のつもりだろう?
ポカンと口を開けて彼を見上げる。
すると、クルリと身体を回されて、強く背を押された。


「それを着て来い。」
「えっ? 今、ですか?」
「お前がどれだけ魅力的でセクシーな女なのか、俺が身を持って証明してやる。だから、直ぐに着替えて来い。」


……って、それって『これから暴走します!』宣言じゃないんですか?!
今から『水着プレイを決行します!』って言ってますよね、そうですよね?!


「ウダウダ言ってないで、早く着替えろ。俺がどれだけアンヌに夢中か、この身体全部で、お前に教えてくれる。」


きゃー!
もう止めて、もう止めて!
そういうエロティックな誘惑をするのは、心にも身体にも悪いんで止めてください!





- 4/15 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -