紙袋の中からは、出てくるわ、出てくるわ。
良くこれだけの女物の衣類やら何やらを、恥ずかし気もなく買えたものだと感心してしまうくらい。
勿論、シュラ様のものも沢山あるのだけれども、どう見たって女物の方が圧倒的に目立つ。


「これ、綺麗な色のサマードレスですね。」
「良いだろう。店員に勧められた中から、お前に一番似合うのを選んできた。」
「買うの、恥ずかしくなかったんですか?」
「何故、恥ずかしがらねばならん? 妻の服を買うのに。」


そうでした。
シュラ様は『妻のため』と言えば、何をしても恥ずかしくない人なのでした。
でも、だからといって、これは流石に……。
私は手に取ったソレを見て、呆れの溜息を吐く。


「どうして水着まで………。」
「夏期休暇には必要不可欠だろう?」


最後に出てきたのは、これはまた素晴らしくセクシーな水着が三着。
これを『妻のため』と言って、買ったのだろうか、この人は?
そう思うと、呆れとも落胆ともいえる溜息が出て、全身が脱力してくる。


とはいえ、私はシュラ様の正式な妻ではない。
彼は黄金聖闘士であるがために、結婚を望んでも、これがなかなか難しく、ハッキリ言って夢のまた夢に近い。
お隣のアイオロスさんのところもそうだが、今の私達は『事実婚』といったところ。
正式に結婚はしていない(出来ない)が、指輪の交換だけはしている。
それで満足するしかないのだ。
自分達は夫婦なのだと、形に拘らずに納得出来れば、それで良いと。


だからこそ、彼は私の事を『妻』と呼んで憚らず、その上、平気で私の下着――、主に身を隠すためのものではなく、彼の目を楽しませて誘うためのものを、勝手に買ってきたりするのだから困ってしまう。
しかも、その下着がドぎついというか、際どいというか、出来れば身に着けたくない類のセクシーランジェリーばかりで。
でも、嫌だといったら不機嫌になるし、時に悲しそうな顔をしたりするし、本当に大変なのです。


「海には行きませんと、言った筈ですが。」
「分かっている。だが、別に海で着るだけが、水着の役割じゃないだろう。」


海以外の場所というと……。
そ、それはもしや、この水着を着て、夜のあれやこれやを楽しもうとか、そういう事ですか?


そういえば、この水着。
私が着るには派手過ぎるものばかりだ。
一着は覆う面積の限りなく少ない黒のセクシーなビキニ。
もう一着は、清楚な白にフリルがあしらわれてはいるが、カッティングが際どい、実はこれもセクシーなビキニ。
最後の一着は、薄いグレーの水に浸かると透けてしまいそうな素材で出来た危険極まりないビキニ。
ていうか、三着とも全部、セクシービキニって!
シュラ様、どういう趣味してるんですか?!


「アンヌが自分で選べば、どうせ出来るだけ肌の露出が少ないものにするのだろう?」
「勿論ですよ。」
「折角の水着なのに、その見事な身体を隠してどうする? 勿体ない。」
「こんな露出度の高い水着を着た姿、他の人の目に触れても良いんですか? シュラ様は。」
「良くはない。だが、他人の目に触れるようなところには行かん。」


て事は、やっぱり。
これを着て、水着プレイとか、そんな事を考えているんですね。
そうなんですね。


「水着プレイ……、か。それも良いな……。」


はっ、しまった!
もしかしてシュラ様に余計なアイディアを与えてしまったかも?!
これは今夜は覚悟をしなきゃいけないわね。
間違いなく、ベッドの上か、お風呂の中か、どちらかで、この水着の中の一着を着なきゃいけない羽目になるのだろう。





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