「お前達……。まだ猫のままなのか……。」
「ミャー!」
「ミー!」
「朝から騒々しいな……。もう少し静かに、優雅に、ゆっくり過ごせないのかい、全く……。」


そうは言いましても、そもそもアフロディーテ様が目を覚まさないから、猫ちゃん達が起こそうと頑張っただけであって、すんなり起きていれば、優雅で落ち着いた朝にもなったのではないだろうか。
呆れた私の視界の中で、シュラ様とアイオリア様は、アフロディーテ様に雑に抱えられてムスッとしている。
その頭をクシャリと撫でてから、私は近付いてきていたカプリコちゃんを膝の上に抱き上げた。


「ミミャミャ。」
「何だ、シュラ?」
「ミミャ、ミミャミャ。」
「私に抗議をされても困る。私だって今朝になれば戻ると思っていたんだから。」
「本当に……。いつになったら戻るのでしょうね。」


理由を考えても、分からないものは分からない。
原因を作ったアフロディーテ様でさえ予想を外してしまったのだから、これ以上、考えてみても無駄だ。
ここは仕切り直しで、気分を変えた方が良い。
私はアフロディーテ様にシャワーと着替えを勧めてから、猫ちゃん達を引き連れてリビングへと移動した。


「ミャーン。」
「はいはい。今、朝御飯を用意しますから、ちょっと待っていてください。」
「ミッ、ミー。」


シュラ様とアイオリア様はキャットタワーへと一直線。
カプリコちゃんはソファーに飛び乗って、背もたれの上を綱渡りの如くにテクテクと歩き出す。
これならば、アフロディーテ様が来るまで放っておいても、勝手に遊んでいてくれそうですね。
一安心してキッチンへと向かう私。


まずはアフロディーテ様と私の朝食を。
角切りのアボカドとトマト、レタスでサンドイッチを作り、茹で卵とチーズ、ハムを付け合わせにしてお皿に盛った。
それから昨日の残りのスープを温めて、猫ちゃん達の朝御飯用に猫缶を開ける。
それだけでは味気ないので、鶏肉のササミを混ぜ込んで、餌箱に盛り付けた。


「朝食が出来ましたよ。」
「ミャッ!」
「ミャーン!」
「あぁ、すまないね、アンヌ。」


ワサワサワサ、パシッ!
パシパシッ!


リビングでは、アフロディーテ様が二匹の黒猫ちゃんを相手に、猫じゃらしを使って遊んでいた。
右に左に巧みに揺れる猫じゃらしを追い駆けて、パシパシと前足を繰り出して捕まえようとしている猫ちゃん二匹。
私の事は、まるで眼中にない、猫じゃらしにスッカリ夢中だ。


「……アイオリア様は?」
「おや? その辺に居なかったかい?」
「姿は見えませんけれど……。」


見回しても目に入る範囲には姿がない。
ソファーの裏にも、キャットタワーの上にも、テーブルの下にも居ない。
何処に行ってしまったのかと部屋の中をウロウロと回り、何となく辺りの物を覗き込む。
と……。


「居ました。居ましたよ。」
「何処に?」


マガジンラックの中、新聞や雑誌の隙間から、モコッとしたアイオリア様の顔だけが、ニュッと上に出ていた。
どうして、そんな狭い隙間に入り込んだのか。
ぎゅうぎゅうにみっちりで、非常に苦しそうに見えるのに。


「猫は狭いところに入りたがるとは聞いていたけど、何故に、こんな無理矢理なところに……。」
「ミー。」
「シュラ様はここまで狭いところには入り込まないですけどねぇ。アイオリア様は狭いところが落ち着くみたいです。」
「狭いって言っても、これは狭過ぎるだろう。」


後で鍋か洗面桶でも置いてみようか、きっと中に入って落ち着くよ、アイオリアなら。
アフロディーテ様は呆れた調子でそう言うと、マガジンラックの中に手を突っ込んで、アイオリア様の身体を引っ張り出したのだった。





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