気が付くと、外にいた。
燦々と降り注ぐ太陽の光が眩しく、それを受けた木々の葉がキラキラと輝いている。
目の前に広がる草原は、風に気持ち良さそうに揺れ、暖かな空気が優しく身体を包む。
ココは知っている景色だわ。
教皇宮の横手から進んだ崖の近く、沢山の木々に囲まれた草原だ。
時々、シュラ様と一緒に来る場所。
お休みの日に手作りのお弁当やお菓子を持って、私は日傘を差して。


そして、私はもう一つの事に気付く。
ココは夢の世界なのだと。
こんなにも目映い陽の光に当たりながらも、私は今、日傘を差していないもの。
これ程の光量には、とてもじゃないが耐えられない私が、こんなにも平然と過ごす事など出来ないと、重々に分かっている。
それに、今の私は驚く程に足取りが軽い。
自分の足で歩いていないかのように、まるでフワフワと浮いているかのように。


「ミャッ。」
「……シュラ様?」


足下の草の陰から、突然、真っ黒な猫ちゃんが顔を出した。
尖った耳、スマートな身体、黄金色の瞳。
見慣れた猫ちゃん、シュラ様の猫化した姿だ。


「ミイッ。」
「アイオリア様も?」


その横から、ふわふわクリクリの金茶色の猫ちゃんが姿を現す。
と思った途端に、二匹がワシャワシャとじゃれ付き始めた。
いつものように両の前足で互いの頭やら首やら肩やらを引っ掛け合い、まるで猫相撲でもしているかのよう。
呆れて見ていると、今度は背後の足下から、別の猫ちゃんが現れた。


「ミー。」
「あら? 貴方は何処の猫ちゃん?」
「ミ、ミー。」


綺麗な青灰色の猫ちゃんに、首を振って促され、木々の生い茂る方へと後をついていく。
すると、その木の根本に、もう一匹、この猫ちゃんとソックリな猫ちゃんがチョコンと座っていた。
若干、こっちの猫ちゃんの方が、青の色味が濃いかしら。
でも、本当に瓜二つで……。


「も、もしかして……。」
「ミー。」
「さ、サガ様と、カノン様では?」
「ミミ、ミー!」


ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶ姿から、その推測が間違っていなかったのだと知る。
このお二人まで猫ちゃんになっているとなると、もしかして、まだ他にも……。


「ミャン、ミャミャン。」
「ミミッ。」


やっぱりいた!
金色のクリックリの長毛の猫ちゃんと、赤み掛かった灰色のサラサラ長毛猫ちゃん。
木の枝の隙間から顔を出したかと思えば、直ぐに木から下りてきて、私の周りをグルグルと回り出す。


「ミロ様ですよね? それに、カミュ様。」
「ミャーン。」
「ミッ。」


手を伸ばすと、嬉しそうに顔を擦り寄せてくるミロ様と、その手を避けて移動し、私の横に寄り添って座るカミュ様。
サガ様とカノン様は、いつの間にか喧嘩にも似たじゃれ合いになっていて、草の上で取っ組み合っている。
何でしょう、この猫ちゃんパラダイスは?
み〜んな可愛い、本当に可愛い。


「ミミャッ!」
「そんな事はない、俺が一番だ。とでも仰っているのですか、シュラ様?」
「ミミャ、ミミャ。」
「正解ですか……。全く、猫ちゃんになっても、シュラ様の自分中心主義は変わらないんですね。」
「ミャッ!」


アイオリア様と一緒にコチラへと駆けてきたシュラ様は、一目散に膝の上へと飛び乗って甘えてくる。
一方のアイオリア様はカミュ様の横へ。
二匹並んでミーミーと鳴いている姿も、また何とも言えずに可愛い。
隣に猫ちゃんを侍らせ、右腕にはシュラ様を抱っこ、そして、左手にはミロ様が擦り寄っている現状。
夢とはいえ、猫ちゃん達と戯れる至福の時間は、まったりと心地が良かった。





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