今日は疲れてクタクタだ。
とはいえ、シュラ様とアイオリア様の事が気に掛かって、グッスリ眠るとまでは、どうにもいかない訳で。
ゴソリ、隣で動く気配を感じて、私は目を開いた。
目を凝らして、横に居る筈のシュラ様を探すが、枕の上に猫ちゃんの姿は見えない。


「……シュラ様?」


小さく声を出して呼んでみるが、返事はない。
広いベッドの上を見回してみても、それらしき姿は見えない。
私の爪先近く、ベッドの上にアイオリア様らしき猫ちゃんの影が見えるだけだ。
私は上掛けの中から出て、アイオリア様の傍まで這っていった。


「……アイオリア様。」
「フニャニャ……、ミミッ?」
「アイオリア様。シュラ様が何処に行ったか知りませんか?」
「ミイッ。」


スヤスヤと寝ていたアイオリア様は、身体を軽く揺さ振られて、驚いたように顔を上げた。
暗闇の中でもそれと分かるくらい目をパチクリと瞬かせて、ジッとコチラを眺めてから、何も知らないと首を左右に振るジェスチャーで示す。


「そうですか、知りませんか。」
「ミッ。」


再びペタリと頭を落として寝てしまったアイオリア様の背中をゆっくりと撫で、そのフワフワでクリクリの毛の感触に浸った。
どうやら心地良いのは撫でている私だけでなく、撫でられているアイオリア様の方も同じようで、クルッと丸まって寝ていた身体が徐々にジワジワと長く伸びていく。
この反応、この無防備さ。
本物の猫ちゃんみたいで可愛い……。


と、その時。
ガタリと音がして、寝室のドアが小さく動いた。
ハッとして視線を向けると、細く開けたドアの隙間に、スマートな猫ちゃんが座っているシルエットが見えている。


「……シュラ様?」
「ミャッ。」


呼び掛けた言葉に、小さな鳴き声の返事が戻ってくる。
スルリと寝室の中へと入り、足音を殺して近寄ってきた猫ちゃんは、ヒョイと身軽にベッドへと飛び乗った。
カサリと小さく上掛けが鳴ったが、殆ど音は立っていない。
夜中だから気を遣って……、という事は、あのシュラ様に限っては考え難い。
なので、猫ちゃんの習性か、それとも、闇の中では気配を殺す闘士の習性か。


「何処かへ行っていたのですか?」
「ミャッ。」
「おトイレですか?」
「ミャン。」


真っ直ぐに自分の枕へと向かわず、何故か足元の方へと回り込んだシュラ様は、そこに寝ていたアイオリア様の身体を前足でツンツンと突っ付いた。
だが、既に眠りの世界に戻っていたアイオリア様は、それを無視して頭すら上げない。
反応がない事が面白くなかったのか、シュラ様はフンと鼻を鳴らして、私の横へと戻ってきた。


「さ、シュラ様も、もう寝ましょう。」
「ミャッ。」


真っ暗闇の中、黒い体毛が暗い景色に溶けて、身体の線は良く見えてはいない。
だが、その中でも、黄金色の瞳だけがランランと輝いて浮き上がっている。
手を伸ばすと、ピンと尖った耳に手が触れた。
それを嫌がってフニャリと身を捩るシュラ様。
身体に沿って手を滑らせ、喉の下を撫でると、途端にゴロゴロと喉を鳴らした。


「おやすみなさい、シュラ様。」
「……ゴロゴロ。」
「ゆっくり休んでくださいね。」
「ミャーン。」


シュラ様の艶々とした身体を撫でながら、目を閉じる。
そこから、いつの間に夢の世界に入ってしまったのか。
自分でも分からないまま、深い眠りへと誘い込まれていた。





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