「はい、どうぞ。カプリコちゃんは今夜、ココで寝てくださいね。」
「ミャーン。」


客用寝室のベッドを整え終えて、ポスポスと上掛けを叩くと、それを合図にカプリコちゃんがベッドの上へと飛び乗った。
たっぷりと空気を含んだ上掛け布団を押し潰すように四つ足で踏み付けて、クルリと回ってベッドの足側に落ち着いた。


「そんな足の方じゃなくて、枕元に寝れば良いものを……。」
「気が向いたら移動しますよ。夜中に目が覚めたら、目の前に居るかもしれませんね、イケメン好きのカプリコちゃんですから。」


ふ〜んと、少しだけ懐疑的に相槌をしたアフロディーテ様は、ベッドの上に腰を掛け、丸まって寝てしまったカプリコちゃんの背中を撫で始めた。
この二人(一人と一匹)ならば放っておいても大丈夫ですね。
とても仲が良さそうですから。


「ドアは少しだけ開けておいてください。カプリコちゃんが出入り出来るように。」
「分かったよ、アンヌ。……って、ん? それって、この子が出て行くだけでなく、そいつ等が入ってくるのもあるって事かい?」
「まぁ、そうなりますね。」


でも、だからと言って、シュラ様とアイオリア様が自ら進んでアフロディーテ様の寝ている寝室に向かうとは考え難いですけれど。
私は部屋の中をウロウロと歩き回っていた二匹を呼び寄せ、両腕に抱っこした。
それと同時に、スリスリと顔を擦り付けてくる様子を見れば、とてもアフロディーテ様の方へ自分の意志で行くとは思えない。


「それでは、おやすみなさいませ。」
「あぁ、おやすみ。」
「ミャーン。」
「ミミイッ。」
「ミミャッ。」


猫ちゃん達も、お行儀良く挨拶を済ませている。
シュラ様に至っては、シュパッと右手まで挙げているし。
ほぼ完全・完璧な具合に猫ちゃんとしての生活に順応しているかと思えば、時々、こうして人間らしい仕草を見せるのが、シュラ様のおかしなところだ。


「さて、私達も寝ましょうね。」
「ミミャミャ。」
「何ですか、シュラ様?」
「ミミャ、ミミャ。」
「お風呂は入りませんよ。朝にシャワーを浴びますから。」
「ミギャッ。」


図星ですか……。
覗きたかったんですか……。
何とまぁ、エッチな猫ちゃんですこと。
猫ちゃんって普通、お風呂とかシャワーとか、水浴びが苦手なんじゃないんですか?
まぁ、猫ちゃんといっても中身は人間なのだから仕方ないですが。


「はい、今夜は大人しく寝てください。」
「ミャッ。」
「ミイッ。」


寝室に入り、猫ちゃん達を腕の中から離す。
パタパタと走り回るアイオリア様。
シュラ様は一直線にベッドへと向かい、飛び乗った。
自分の枕の上へ行き、前足二本で揉むように枕を踏み踏みしている。
また一気に猫ちゃんらしくなりましたね。
柔らかいお気に入りのものを揉み揉みするのは、猫ちゃんの習性ですから。


「アイオリア様もベッドの上に、どうぞ。」
「ミイッ。」


シュラ様が自分の枕の上にスッカリ落ち着いたのを見て、私もベッドへと上がる。
その様子を少しだけ遠巻きに眺めていたアイオリア様を見つけ、上掛けを叩いてベッドへと呼び寄せた。
ヒョイと身軽に飛び乗って、足元でクルリと丸まる。


「そこで良いんですか?」
「ミイッ。」
「では、おやすみなさいませ。シュラ様、アイオリア様。」


明日には元の姿に戻っている事を祈って。
灯りを消した私は、ギュッと目を閉じた。
真横に猫の姿となったシュラ様の息遣いを感じながら……。





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