「ミニャミニャニャ……。」


スッカリ籠絡されてしまいましたね、シュラ様。
アフロディーテ様の膝の上、背中をゆったりと撫でられながら、ダラリとだらしなく身体を伸ばしている。
口元からは、ふにゃふにゃと心地良さ気な声が漏れ、今にも寝落ちそうな様子だ。


「見たかい、アンヌ? 私の実力を。」
「シュラ様が単純なだけだと思いますが……。」
「ん? 何か言ったかい?」
「いえ、あの、猫ちゃんは可愛いなと……。」
「まぁ、可愛くなくはないね。」


完全に認めるのが嫌なのですね、アフロディーテ様。
そんなに意地を張らなくても良いのに。
私は自分の膝に頭を乗せたアイオリア様の姿を見下ろした。
こちらもシュラ様と同様に、今にも寝落ちてしまいそうな様子。
もう夜も更けてきた。
そろそろ休む時間だろう。
カプリコちゃんも、キャットタワーの真ん中辺りでスヤスヤと眠ってしまっている事だし。


「もう休みましょうか。」
「もう?」
「少し早いですが、流石に私も疲れました。」
「そうか。アンヌにとっては大変な一日になったからね。ゆっくり休むと良いよ。」


シュラ様達の事が気になるせいで、ゆっくり睡眠が取れるかどうかは微妙なところだけれども。
それでも、横になるだけはなりたいと思った。
部屋の中が睡眠モードに変われば、この猫ちゃんギャング二匹も大人しくなってくれるだろう。


「客用寝室を使わせてもらえるのかな?」
「はい。今、御用意いたしますね。」
「この猫共はどうするんだい?」


シュラ様は勿論、私と一緒に。
カプリコちゃんは放っておいても、自分の好きなように眠るでしょうけれど、アイオリア様は……。


「ならば、アイオリアは私と一緒に寝るかい?」
「ミミッ?!」


私の膝でウトウトしていたアイオリア様だが、アフロディーテ様の恐怖(?)の一言で、弾かれるように身体を起こした。
そして、ウルウルと半泣きの瞳で、訴えるように私を見上げてくる。
そ、そんなに嫌なのですね、アイオリア様……。


「何が嫌なのだ? さっきも言ったが、私は取って食ったりはしないよ。」
「多分、気持ち的なものだと思います。アイオリア様は繊細ですので……。」
「繊細ねぇ。」


元はゴリゴリマッチョの脳味噌まで筋肉のクセして良く言うよ。
そう悪態を吐いて、アフロディーテ様は膝の上のシュラ様を抱き上げた。
ふがふがと声を上げ、未だ暢気にウトウトし続けるシュラ様。
危機感の欠片も見当たりませんね。
いっそ、シュラ様がアフロディーテ様と一緒に眠ったら良いのではないでしょうか。


「夜中に目覚めて、大騒ぎされたら困るのは私だ。」
「確かに、シュラ様なら真夜中だろうと一騒動、起こしそうです……。」


やはりシュラ様とアイオリア様は私と一緒に、カプリコちゃんをアフロディーテ様にお任せするのが一番だろう。
私はアイオリア様を床に下ろすと、キャットタワーの真ん中、巣箱のような箱の中で眠っているカプリコちゃんを引っ張り出して、腕に抱いた。
驚いて目を開けたカプリコちゃんだが、抱き上げたのが私と知ってか、ゴロゴロと喉を鳴らして、胸の谷間に頭を潜り込ませてくる。
本当にシュラ様ソックリですこと!


「カプリコちゃんは、アフロディーテ様と休んでくださいね。」
「ミャーン。」


ゴロゴロ、ぐりぐり。
私の言葉を理解しているのか、いないのか。
御機嫌な声を上げて谷間に潜り続ける猫ちゃんの様子に、私は溜息を吐くしかなかった。





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