パタパタパタ……。
トコトコトコ、トコトコトコ。


デスマスク様と私の食事よりも前に、まずは猫ちゃん達の食事を。
そう思い、ツヤツヤと美味しそうなキャットフードを乗せた餌箱を三つ、手に抱えて歩いていると、両サイドから私の足首に纏わり付いてくるシュラ様とアイオリア様。
早く食事がしたくて擦り寄ってきているのか、構って欲しくてじゃれ付いてきているのか。
何れにしても前に進み難いので、非常に邪魔です、とっても邪魔です。


「退けてください、お二人共。じゃないと、蹴り飛ばしてしまいますよ。」
「ミャッ!」
「ミイッ!」
「お腹が空いているのなら、邪魔をしないでくださいね。」


スリスリスリ……。
く、擽ったいです。
感触の違う猫っ毛が、左右から同時に足首を攻撃してくる、この破壊力。
これは可愛いもの好きにとっては、たまらない感覚ですね。


「オイ、アンヌ。一人で悶絶してねぇで、早く猫共に餌やったらどうだ?」
「そ、そうなんですけど……。お二人が前に進ませてくれないので……。」
「しゃあねぇなぁ、ったく。」


ガリガリと髪を掻き毟ると、デスマスク様はヒョイと簡単にシュラ様とアイオリア様の首根っこを摘んで、悠々と持ち上げてしまった。
フギャーと抗議の声を上げる猫ちゃん達を無視して、ダイニングへとスタスタ進んでいく。
そして、その後をスイスイとくっ付いて歩くカプリコちゃん。
ピッタリ息が合っていますね、仲良しですね、ホント。


「さぁ、ご飯にしましょう。」
「ミミャッ!」
「ミミー!」


ご飯ご飯、早く食べたい。
ご飯ご飯、直ぐにくれくれ。
ご飯ご飯、美味しいものくれ。


キラキラ、いや、ギラギラと目を輝かし、今にも口の端から涎が垂れ落ちそうな顔で見上げてくるシュラ様とアイオリア様。
そして、その後ろ、澄ました顔でお行儀良く待つカプリコちゃん。
何というか……、本物の動物よりも、シュラ様達の方が、ずっと動物っぽいというか……、ワイルドというか……。
この二人なら野生に出ても十分に大丈夫な気がします。
強いですしね、色々と攻撃も出来ますし。


モッモッモッ……。
カッカッカッ……。
モシャモシャ……。


「良く食うなぁ、コイツ等。俺だったら、猫に変わった時点でショックが強過ぎて、メシなンざ食う気もしねぇだろうな。」
「デスマスク様が、まさかそんな……。」
「あ? 何だぁ、アンヌ?」
「いえ、何も……。」


デスマスク様が、そんな繊細な心を持っているとは、とても思い難いのですが。
寧ろ、ふんぞり返って鼻を鳴らした挙げ句、お気に召す味のキャットフードが出てくるまで絶対に口を付けないくらいの傍若無人具合を発揮しそうですけれど。


「汚ぇなぁ、オイ。」
「う〜ん、やはり慣れない状態で食事するのは難しいのでしょうか。」


シュラ様とアイオリア様は、餌箱の下にポロポロと餌が零れ落ちてしまっている。
一方のカプリコちゃんは、少しも零す事もなく綺麗に食べ進めている。
餌箱に顔を突っ込んで食べるという行為が、やはり慣れないと難しいのだと思う。
舌の使い方などもあるのだろうし。


「舌使いなら、シュラはそれなりに上手いンじゃねぇの? オマエなら良〜く知ってンだろ?」
「な、なな、何を仰るんですか、デスマスク様っ?!」
「お? 真っ赤になったっつー事は、シュラのヤローもアレコレしてンだな。流石、ムッツリ山羊。」
「ば、馬鹿な事を仰らないでくださいっ!」


これはセクハラですよ、セクハラ!
シュラ様が元の姿に戻ったら、絶対に告げ口してやるわ!
あぁ、でも、こんな恥ずかしい事を、どうやって話そうか……。
ウ〜ンと悩んでいると、横のデスマスク様がニヤリと笑ったのが見えた。
そういう方面の話なら、私が簡単に告げ口など出来ないと分かっていてのセクハラ発言だったという事ね!
相変わらず酷い人だわ!





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