モッシャモッシャ、ゴクン。


「ミャーン。」
「駄目です、シュラ様。まだ周りに沢山、零れていますから。」
「ミミャッ。」


注意されて、餌箱から零れ落ちた餌をペロペロと舐め出すシュラ様。
その間に、先に零れた餌を綺麗に舐め終わったアイオリア様が、褒めてと言わんばかりにキラキラと目を輝かせて近寄ってくる。
でも、撫で撫でより前に、まずお口の周りを拭わなければ。


「ちょっと大人しくしていてくださいね。」
「ミー。」
「はい、綺麗になりましたよ。」
「ミ、ミー。」


はいはい、撫で撫でですね。
ワシャワシャと小さな頭を撫でて上げると、気持ち良さそうに目を細める。
アイオリア様は本当に良い子(猫?)で可愛いですね。
などと思っていたら、それを嫉妬してか、零れた餌を舐め終わったシュラ様が、邪魔をしてやるとばかりに割り込んできた。


「ミャッ!」
「ミー!」
「シュラ様は変わらず横暴ですね。素直なアイオリア様とは対極的で、呆れてしまいます。」
「ミミャッ!」
「折角、愛らしい猫ちゃんの姿になっているのですから、もう少し可愛らしい態度を取ったら良いですのに。」


私は既に餌を食べ終わり、チョコンと座っていたカプリコちゃんを抱き上げ、頭から背中にかけてゆっくりと撫でた。
見た目はシュラ様とソックリの黒猫ちゃんなのに、中身は随分と違っていて、お利口さんの猫ちゃんですね。
それを見て、シュラ様は心外だと言いたげにフンと鼻を鳴らす。


「さて、と。アンヌ、俺等もメシにすっかね。」
「はい。流石にお腹が空きました。冷めてしまう前にいただきましょう。」


食卓テーブルに着くと、足首に擦り寄ってくる猫ちゃん二匹。
く、擽ったい……。
し、食事に集中出来ないので止めてください……。
一方のカプリコちゃんは、一人(一匹?)悠々と空いた椅子に飛び乗り、澄ました顔で私達が食事する光景を眺めている。
本物の猫ちゃんの方が、聖闘士な猫ちゃんよりお行儀が良いとは、どういう事ですか……。


「しっかし、ホントに明日の朝には元に戻ンのか、コイツ等?」
「……はい?」
「普通にこのまンまかもしンねぇだろ? 元に戻る保証がある訳じゃなし。」
「それは……。」


確かに、アフロディーテ様が「明日には戻るのではないか。」と言っているだけで、それは『多分』であって『確実』ではない。
過去に摂取した薔薇毒の影響で猫化したのなら、それは当然、予想外の出来事。
その効果が、どのくらい続くかなんて、誰にも分からない。


「どうしましょう? 明日の朝に戻っていなかったら。」
「どうするもこうするも、戻るまで待つしかねぇだろ。ココでノンビリとな。」
「いつまでも戻れないのは困りますね。シュラ様達にとっても、私達にとっても。」


カチャリとフォークを置いて、溜息。
隙間からテーブル下の猫ちゃんを見遣ると、ビシビシと二匹で猫パンチを繰り出し合ってじゃれている。
そんな姿に和みつつ、それでも不安は募るばかり。
本当に、いつまでこの状況が続くのか……。


「ま、新たな薬を摂取したワケじゃねぇし、そンなに長引かねぇと思うがな。」
「そうだと良いのですけれど……。」


テーブル下では、猫パンチの応報から取っ組み合いに変わり、ミギャミギャミーミーと鳴き声が響いてくる。
仲が良いようで、仲が悪いようで。
はぁ、大いに心配です。



→第9話へ続く


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