嵐のような時間が過ぎ、気付けば、いつの間にやら夕刻。
シュラ様もアイオリア様も大人しくしている間に何とかしてしまおうと、急いで夕食の支度を済ませる。
キッチンからリビングへと戻ると、猫ちゃん二匹はじゃれ合って遊んでいた。


「ミミャ、ミミャミャ。」
「ミ、ミミイッ。」


これはまた見事な猫じゃれ合い。
床に転がって、前足・後ろ足をワシャワシャ動かし、取っ組み合っている。
猫ちゃんだから可愛いで済まされるが、これをシュラ様とアイオリア様の姿に置き換えると、恐ろしい事ですね。
うん、危険、危険。


「置き換えンじゃねぇよ、アンヌ。それだと、俺がシュラやアイオリアを抱っこしてるっつー、考えたくもねぇ事態になンだろ。」
「そうですよね、考えては駄目ですね……。」


呆れの声を吐き出したデスマスク様は、ソファーにドッカリと座り、黒猫のカプリコちゃんを愛でている。
大股開きの足の間、クルンと丸まって上手い具合に収まったカプリコちゃんがスヤスヤ眠っている様子は、何と言うか……。
う〜ん、強かな猫ちゃんと言うべきか。
気難しいデスマスク様に甘えた上に、あ、あんな場所に、ちゃっかり居座る事が出来るだなんて、流石はイケメン好きで黄金聖闘士好きの猫ちゃんです。


「夕食の用意が出来たんですけど、その状態なら、まだ無理そうですね。」
「なンでだよ。」
「デスマスク様が立ち上がったら、カプリコちゃんが起きてしまうじゃないですか。目が覚めるまで待った方が良いかと。」
「待ってたら、いつになるか分かンねぇだろ。」


そうですね。
なので、シュラ様とアイオリア様と私は先に食事を済ませてしまいますので、デスマスク様は後からどうぞ。
そう告げると、思いっ切り顰め面をするデスマスク様。


「俺だけ後って、どういう事だ。あ?」
「仕方ないです。カプリコちゃんを甘やかして、そんな場所に寝かせてしまったデスマスク様の責任じゃないですか。」
「猫のためにメシを我慢なンてやってらンねぇよ。」


うりゃ、という掛け声と共にカプリコちゃんを押し退けて、デスマスク様が立ち上がる。
同時に、ソファーから転げ落ちたカプリコちゃんは、普段は細く鋭い目を真ん丸にして、キョロキョロと顔を左右に振った。
グッスリと眠っていたからか、何が起こったのか分からずに、きっと吃驚したのだろう。


「はいはい、吃驚しましたね。酷い人ですね、デスマスク様は。」
「ミャー。」
「ちゃんと目は覚めましたか? 今から御飯ですけど大丈夫ですか?」
「ミャー。」


カプリコちゃんを抱き上げ、頭を撫で撫ですると、真ん丸だった瞳が、再び細くなっていく。
そして、その小さな頭を、私の首からデコルテに掛けてスリスリと擦り付けてきた。
く、擽ったい……。
けど、可愛い……。


「見た目もシュラにソックリだが、エロさ加減もシュラにソックリだな、雌猫のクセに。」
「似てますか? シュラ様とカプリコちゃんが? 傍若無人なシュラ様には似てないかと思いますが。」
「ほぉ、それでか?」


呆れ顔で指を突き出すデスマスク様。
見れば、擦り付ける事を止めたカプリコちゃんが、私の胸の谷間に顔をグリグリ押し付けていた。
ぐりぐりぐり、ぷはっ、という仕草付きで。
確かに、この行動はシュラ様にソックリです。


「駄目じゃないですか、こんな事しては。」
「ミャン?」
「谷間に潜ったって、何も面白い事はないですよ。」
「ミャー。」


言って聞かせても無駄のようで、返事は戻ってきても、またグリグリと胸の谷間に顔を埋めるカプリコちゃん。
何なのですかね?
黒猫ちゃんは皆、人の胸に顔を埋めるのを好むのですかね?


「ンな事あるか、違ぇよ。アンヌの胸が潜るのに気持ちイイ具合だからじゃねぇの?」
「何ですか、それ?」
「人に戻った後に、シュラに聞いてみろよ。」
「そんな事を聞いたら、押し倒されます、間違いなく。」


絶対に誘っていると勘違いするわ、あの人の事だもの。
自分の都合の良いように解釈するのが得意ですからね。





- 4/6 -
prev | next

目次頁へ戻る

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -