どうしようかとワタワタしている私へと、そんな様子など意に介さずに近寄ってきたアイオリア様。
床に膝を着いていた私の足に、顔をスリスリと擦り付けた後、何か言いたげに私を見上げてくる。
何か言いたげというか、「撫でて、撫でて!」と訴えているのがハッキリと分かる。
まん丸な瞳をキラキラと輝かせて、期待に満ちた表情が眩しくて。
その純粋な瞳が痛いくらいです……。


「ミミイッ。」
「え、えっとぉ……。」
「ミイッ。」


そ、そうですよね。
アイオリア様は私のお願いを聞き入れて、電撃攻撃を実行しただけですものね。
彼自身は何も悪い事はしていないのだ。
シュラ様は未だビリビリしていますけど。
暫く起き上がれそうにないですけど。


「アイオリア様、ありがとう御座いました。」
「ミミッ、ミー。」


撫で撫で、撫で撫で。
ゴロゴロ、ゴロゴロ……。


金茶の毛で覆われたもっふりした頭を撫でて上げると、嬉しそうに気持ち良さそうに喉を鳴らして、私の手の甲に頬を擦り寄せてくる。
そして、いったん頭を離すと、もう一度、まん丸な瞳をキラキラさせて私を見上げた。
「もっと撫でて!」と言わんばかりに。


ううっ、その可愛らしさは反則です、アイオリア様。
思わず抱き上げ、ギューッとした後、スリスリと頬擦りまでしてしまう私。
可愛い……。
このふわふわもっふり具合が特に可愛い……。


「オイ、コラ。アイオリアばかり可愛がってンと、コイツが目ぇ覚ました後に、またギャーギャー喚くぞ。」
「そ、そうですけど……。でも、シュラ様は少し短気が過ぎるので、多少の反省はすべきじゃないですか?」
「お、言ったな、アンヌ。あンま強気な事を言うと、後で痛ぇ目に遭うぜ。」


シュラ様に聞こえていればの話ですけれどね。
朝まで寝かせてもらえずに延々と夜的な相手をさせられるとか、ほぼソッチ系の仕返しをされるのは目に見えていますけれどね。
でも、ほら。
シュラ様は、まだピクピクと何処かに意識を飛ばしていますから、聞こえていない、聞こえていない。


「俺が告げ口しねぇとでも?」
「デスマスク様は厄介事に巻き込まれるのがお嫌いなので、余計な事は言わないと思います。」
「あー、まぁ、確かに。流石に長年、俺の傍に居ただけの事はあるな、アンヌ。」


見事に当たってやがる。
そう呟いた後、デスマスク様はシュラ様の身体に渇を入れ、飛んでいた猫ちゃんの意識をコチラへと戻した。
ビクリと身体を震わせて、頭だけを上げてキョロキョロと周囲を見回すシュラ様。
よ、良かった、ちゃんと意識が戻ったみたいで。


「全くよぉ。オマエは他人様に迷惑掛けてばっかだな、ホント。」
「ミミャッ?!」


呆れの混じった溜息を吐き、強く髪を掻き毟ると、デスマスク様が問答無用に黒猫ちゃんを抱き上げた。
驚くシュラ様。
しかし、先程のアイオリア様による電撃攻撃で弱っているのか、今度は抵抗する様子を見せなかった。


「大人しくしてりゃ、それなりにめんこいンだけどな。綺麗な黒猫なンだからよ。」
「ミミャミ! ミミャミャ!」


ミャーミャーと鳴き声だけで反論するシュラ様は、「貴様に可愛いとか言われても、嬉しくとも何ともないわ!」と言っているようだ。
だが、何だかんだ言っていても、悪友で、親友で、気心知れた相手。
抗議の鳴き声は上げても、聖剣である手足を、もう振り回さなくなっている。
そんなシュラ様の様子が、何処となくデスマスク様に甘えているというか、頼っているようにも見えて。
私は彼等に気付かれないように、クスリと小さく笑みを零した。





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