二匹の猫ちゃんを連れて宮内へと戻る。
シュラ様とオヤツにする約束をしていたのだ。
待ちかねていたのか、部屋の中に入ると同時に、カミュ様の腕の中から飛び降りたシュラ様が、「ミャーン。」と催促の声を上げながら私の足首に擦り寄った。


「はいはい。今、猫ちゃんササミを持ってきますから、アイオリア様と遊んでいてくださいね。」
「ミャー。」
「ミイッ。」


アイオリア様を床に下ろすと、すぐさま飛び掛かってじゃれ付く二匹。
そのまま取っ組み合って、床をゴロンゴロンする姿は本当に可愛い。
ずっと眺めていたい、可愛い……。


「アンヌ、オヤツにするのではなかったのか?」
「はっ?! す、すみません、カミュ様。そうでした、オヤツでした。」


いけない、いけない。
すっかり猫ちゃんの可愛い遊び姿に籠絡されてしまいました。
慌てて、デスマスク様が猫用品一式を入れて持ってきてくれた紙袋の中を漁る私。
そして、中から取り出した猫ちゃんササミを、まず一切れ、シュラ様に。


「はい、シュラ様。ササミをどうぞ。」
「ミミャー。」


はぐはぐとササミに噛み付くシュラ様を、真横から羨ましそうに眺めるアイオリア様。
あわよくば横から奪い取ってやろうという気配がプンプンしているが、如何せん、シュラ様には隙がない。
流石は肉体派の聖闘士、食事中であっても、オヤツに夢中になっていても、周囲に隙を曝さないのだ。
まぁ、眠っている時はアレな感じで隙だらけですが……。


「はい、アイオリア様も……。と、言いたいところですが、まだ駄目です。」
「ミッ?!」
「どうして脱走などされたのですか? 真面目なアイオリア様の行動とは思えないですが。」
「ミッ! ミイッ、ミミミッ! ミミミイッ!」


理由を聞いたは良いものの、猫語なので何を言っているのかサッパリ分からない。
物凄く熱弁しているのは理解出来るのですが、話の内容は全く分からない。
助けを求めてカミュ様をチラと見遣る。
彼はササミに夢中なシュラ様の背中を撫でながら、小さく溜息を吐いた。


「それが……。ミロが出て行って直ぐに、アイオリアの態度が豹変したのだ。それまでは大人しく座っていたのに。」
「そういえば、ミロ様の姿がありませんね。どうしたのですか?」
「何やら小宇宙通信で誰かに呼ばれたらしく、慌てて十二宮を下りていったのだ。そして、ミロの姿が見えなくなった途端に、アイオリアがソワソワし出して、暫くするとウロウロ歩き回り、挙げ句の果てに脱走だ。」


成る程、ミロ様ですか、そうですか。
納得がいったので、お預け状態のササミを一切れ、アイオリア様に渡す。
勢い良く、こちらもはぐはぐと齧り付くアイオリア様。


「ミロ様はマタタビ族なのです。」
「……は?」
「デスマスク様が言っていました。異常に猫ちゃんを惹き付ける体質みたいですよ。」
「ミロが?」
「はい。最初にココに現れた時、シュラ様もアイオリア様も我を忘れてミロ様に飛び付いていましたから。」


暫く一緒に居たから免疫が付いたのかと思ったけれど、どうやら離れると、また発症するようだ。
いや、そうじゃなくて、効果が切れた結果が、先程の脱走だったのかも。
マタタビ族のミロ様が居なくなって、急に不安を覚えたのだ、アイオリア様は。
獅子宮に居るよりも、ココでシュラ様と一緒に過ごしている方が安心だと思って、脱走してきたのだろう。
同じ状況・状態の人が傍に居るというのは、心強いものだから。





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