「う〜ん……。やっぱり今夜はアイオリア様もココで預かった方が良さそうですよねぇ。」
「そうすべきだ、アンヌ。夜中に脱走されては、たまったものではない。」
「ミッ?」


ハァと吐いた溜息の大きさに、齧っていたササミから顔を上げて、アイオリア様がカミュ様の顔を見上げる。
そんな可愛い顔で見つめてくるなら、そもそも脱走などするなと言いたげに、カミュ様はもう一度大きな溜息を吐いた。
それと同時、シュラ様がオヤツのササミを食べ終わって顔を上げた。


「ミャッ。」
「駄目です。」
「ミミャッ!」
「ササミは一個だけだと、デスマスク様にキツく言われていますから。オヤツばかり、そんなに食べてはいけません。」
「ミミャー!」


はいはい、シュラ様は少し大人しくしていてください。
今はシュラ様に構っている場合ではないのです。
まぁ、撫で撫でくらいはして上げても良いですけれど。


「ミャーン……、ゴロゴロ……。」
「シュラは単純なのだな。」
「シュラ様は元から単純ですよ。あの強面とポーカーフェイスで上手い具合に隠れて、あまり気付かれていないですけれど。」


さも当然とばかりに私の膝の上に乗ってきて、ゴロリと丸まったシュラ様を頭から背へと撫でながら、口から零れるのは大きな溜息。
どうも、先程から溜息ばかりですね、いけない、いけない。


「で、アイオリア様は磨羯宮にお泊まりしますか?」
「ミ、ミイッ。」
「そうですか。お泊まりするそうですよ、シュラ様。ちゃんと仲良くしてくださいね。」
「……ゴロゴロ。」
「聞いていますか?」


撫で撫でに気を良くして、すっかりお昼寝モードだ。
ならば、あちらの誰も座っていないソファーとか、キャットタワーの上とか、もっと良い場所があるだろうに。
まぁ、可愛いから良いですけどね。
触り心地も艶々ふんわりで気持ち良いし。
でも、膝の上で眠ってしまうと、私が仕事を出来なくなってしまう。


――バターン!!


と、その時だった。
リビングのドアを力一杯、開け放って、ミロ様が颯爽と姿を現した。
腕にはシュラ様そっくりの黒猫、獅子宮のカプリコちゃんを抱えている。


「何で獅子宮に誰も居なくなってる――、どわっ!」
「ミミャー!」
「ミミッ! ミー!」


そして、それとほぼ同時に、弾丸の如く飛び出して、彼に飛び掛かっていく猫ちゃん二匹。
これがデジャブというものでしょうか。
あんなに心地良さげに寝ていたシュラ様でさえ、物凄い勢いで飛び出していったところを見ると、やはりミロ様のマタタビパワーは、一度離れると効果が復活するようだ。


「ヤメロッてお前等! 飛び掛かんな!」
「ミミャー!」
「ミミー!」


シュラ様とアイオリア様の勢いに飲まれてタジタジのミロ様。
そんなミロ様を見限ったのか、腕の中からヒョーイと飛び降りたカプリコちゃんは、慣れた様子でキャットタワーを上り始める。
そして、タワーの中間にある箱(猫の巣?)の中に収まると、フンと鼻を鳴らして、私達を見下ろした。


「凄いな。これが噂のマタタビ族パワーなのか……。」
「どうしてか猫ちゃん達、み〜んなミロ様の事が大好きなのですよねぇ。」
「カミュ! 感心して見てないで、助けろ!」


二匹の迫力ある飛び掛かり具合に、見事に押されてしまったミロ様は、その場でドサッと床に座り込む。
それ幸いとばかりに、お腹やら脇腹やらにスリスリと擦り寄る黒猫ちゃんと金茶猫ちゃん。
巧みな攻撃に悶絶するミロ様。
それを涼しげに見下ろすカミュ様は、表情を変えないながらも、心の中の楽しげな様子がダダ漏れだった。





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