どうしましょう、シュラ様。
ミロ様にアイオリア様をお任せしてしまえば、確かに楽にはなるのでしょうけれど。
猫ちゃんの姿とはいえ、遊び相手や張り合う相手が居なくなるのは、やはり寂しいのでは?


「……フガフガ。」
「全っっっ然、起きる気ないですね、シュラ様。」
「ホント、暢気だよなぁ、シュラ。」
「ミイッ。」


お腹丸出し、ヘソ天姿で、危機感もなく、グースカゴロゴロ。
身体中の何処を撫で回しても、フガフガと心地良さげな寝息が漏れるだけ。
マイペースで自由気儘で、猫ちゃんにピッタリの性格ですね。
いっそ、そのままずっと猫ちゃんの姿でも良いんじゃないですか?


「邪魔をする。」
「あ、カミュ様……。」
「あれー、カミュ? どうした?」


パタンと静かにドアを開けて、部屋へと入ってきたのはカミュ様だった。
少し前に任務から戻ってきたそうで、教皇宮でシュラ様達が猫化してしまった話を聞いて、顔を出してみたという。


「またもや、このような事になるとは……。」
「薔薇毒の後遺症だというのなら、仕方ありません。明日には元に戻るようですから。」
「それにしても、シュラは暢気だな。」


カミュ様が入ってきても目覚めず、傍に座って一頻り撫でられても、まだ目覚めず。
これが敵なら、今頃、抹殺済みですよ。
どれだけ神経図太いんでしょうか、この人は。


「シュラの身体は艶々だな、触っているだけで心地が良い、中々の感触だ。さぁ、アイオリアも。」
「ミッ?!」
「私は撫でるのは上手いのだ。怖がらなくても良い。」


そういえば、前回の時も、カミュ様はアイオリア様を上手い具合に手懐けていた。
子供の扱いに長けている人は、小さな動物の扱いも上手なのですね。
頭から耳の後ろ、そして、顎の下へと、カミュ様が絶妙な加減で撫でていく内に、アイオリア様の喉奥からはゴロゴロと幸せそうな音が漏れ始める。


「アイオリアは素直で可愛いのだ。」
「それって、シュラは可愛くないって言ってるように聞こえるけど?」
「素直の前に、自分勝手過ぎるのだ、彼は。」
「笑えません、カミュ様、それ……。」


未だお腹を見せたままでフガフガ寝息を立てるシュラ様の小さな顔を両手で包み込み、ミヨーンと両頬を左右に引っ張った。
おお、伸びる伸びる。
流石、猫ちゃん、皮膚が柔らかい。
しかし、こうまでされても、まだ寝覚めないシュラ様の眠りの深さには呆れるばかりです。


「えい。いい加減、起きてください。」
「…………ッ。」
「ほらほら、早く起きないと、呼吸困難で死んじゃいますよ。」
「……フガッ!」


流石の私も少々、腹が立ってきたので、フガフガ寝息を漏らす口を手の平で塞ぎ、更には、小さな鼻の穴を指先で塞ぐ。
これには暢気なシュラ様も、知らんぷりは出来なかったようだ。
呼吸困難で息を詰まらせ、慌てて目を見開き、しなやかな身体を跳ね上がらせて起き上がった。
真っ黒な顔の真ん中にバチッと開いた瞳が、何が何やら分からないと言わんばかりにキョロキョロと動いて、部屋の中を探るように窺い見ている。
その無駄に警戒した様子が何とも面白くて、私も、そして、ミロ様とカミュ様も、思わずプッと吹き出していた。





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