――ガリガリガリッ!
――パシパシパシッ!


アイオロス様が起き上がった後も、継続して彼への攻撃を続ける猫ちゃん達。
胡座で床に座るアイオロス様の左膝をガリガリ引っ掻くアイオリア様、背中側に回って腰の辺りにパシパシ猫パンチを繰り出すシュラ様。
だが、その程度の攻撃では痛くも痒くもないのか、されるが儘に放置して、ボーッと座り続けているアイオロス様。
えーっと……、もしや気付いてないのでしょうか、猫ちゃん達の攻撃に。


「……アンヌ。」
「は、はいっ? な、何でしょうか、アイオロス様?」
「アイオリア達は、俺に何をしようとしてるんだ?」
「それは、あの……。その、アイオロス様に遊んで欲しくて、じゃれ付いているのではないかと……。」


苦肉の言い訳、口から出た大嘘。
だが、それまで呆然とした死んだ魚の目のような瞳だった彼が、「アイオロス様に遊んで欲しいのでは。」との言葉を聞いて、途端に元気を取り戻す。
パアアと表情が明るくなり、瞳からは零れんばかりに活力が溢れ、痛い筈の猫ちゃん達からの攻撃も、親愛の念の現れだと思っているようだ。
た、単純過ぎます、アイオロス様。
良くもそれで皆を引っ張る教皇補佐の役目を務めていられるものですね。


「そうか、そうか〜。リアは兄ちゃんと遊びたいのか〜。」
「ミッ?! ミイイッ!」


見事に捕まったアイオリア様は、アイオロス様に強引に抱き上げられ、問答無用に頬摺りスリスリ。
そして、悲鳴に近い鳴き声が上がる。
しかし、身体を捩る猫ちゃんの動きが喜んでいるように感じるのか、アイオロス様のスリスリ愛撫は更に激しくなるばかり。


「ねぇ、デスマスク。私にはアイオリアが喜んでいるようにも、遊んで欲しいようにも見えないんだけれど……。」
「オマエだけじゃねぇ、俺にも見えねぇよ。つか、嫌がってンだろ、完全に。」
「あの派手な仰け反りが喜んでるように見えるって、ロスにぃの身勝手な補正能力は凄いな。」


アフロディーテ様、デスマスク様、ミロ様の呆れの言葉が飛び交うが、誰も助けようとしないのは如何なものかと……。
いえ、アイオロス様が相手では、助けようと思っても助けられないのでしょうけれど。
アイオロス様も、意地でもアイオリア様を死守するでしょうし。


「やっぱり可愛いなぁ、アイオリアは。」
「ミイッ! ミイイッ!」
「シャー! ミギャー!」


誰も助けに入ってくれない可哀想なアイオリア様の惨状に、シュラ様だけが何とかしようと躍起になって攻撃を続けていた。
背中への猫パンチから、飛び上がっての猫タックル、そこから更に肩胛骨辺りへのジャンピング猫キックと激しさが増していく黒猫ちゃんの華麗なる攻撃の数々。


「何だ? シュラも俺と遊びたいのか? そうかぁ、やっぱり俺は人気者、皆のロス兄さんだからなぁ。」
「ミギャッ?! ミギャー!!」


あっさり捕まるシュラ様。
喉の奥からは絶叫に近い鳴き声が上がる。


「誰が皆のロス兄さんだって? 誰が人気者だって?」
「幻聴だ、聞き返すな。ぜってぇに気のせいだからな。」
「シュラの奴、目も釣り上がって、毛も逆立って、どう見ても毛嫌いしてるようにしか思えないんだけど。」
「見るな、見るな、目を逸らせ。俺等に攻撃の矛先が向かねぇように、気配を絶って、意識を飛ばせ。」


そんな、無責任な……。
猫ちゃん達を犠牲にして、自分達は安全を確保しようだなんて、後で罰が当たりますよ、デスマスク様……。





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