ピクン!
それまで、まったりウトウトとしていた猫ちゃん二匹が、ビクリと顔を上げた。
何かを感じ取ったのか、ピンと耳を立てギロリと目を見開くシュラ様とアイオリア様。
それぞれが伏せた姿勢のまま、ブワッと太くピンと張った尻尾をユラユラ揺り動かした。
と思った、次の瞬間……。


「ミギャー!」
「キシャー!」


デスマスク様とミロ様の膝の上から弾丸の如く飛び降りて、アフロディーテ様へと襲い掛かった。
驚異的なジャンプ力で、交互にピョンピョンと飛び上がる猫ちゃんは、アフロディーテ様の胸辺りまで届きそうな勢い。
というか、この光景。
デジャブでしょうか、前にも見た事あるような気が……。


「デジャブか、これは? 前にも見た事あるような憎たらしい猫共だな。」
「ミギャギャー!」
「キシャー!」
「特に、この目付きの悪い黒猫は、見ているだけでムカつくんだけど……。」
「ミギャッ! ミギャギャッ!」


ピョンと飛び上がったところを上手く合わせて、アフロディーテ様が黒猫ちゃんをキャッチして捕まえてしまった。
当然、バタバタと手足を振り回し、暴れ捲るシュラ様だが、こちらも当然に、聖闘士であるアフロディーテ様の握力からは逃れられはしない。


「オイ、あンま乱暴に扱うなよ。そいつ、シュラだから。」
「なる程、デジャブではなく、以前と同じ光景という訳か。」


どおりで憎たらしく見える訳だ。
そう呟いたアフロディーテ様は、首根っこを掴まれてブラーンとするシュラ様を眺める。
それから、ピョンピョンと飛び付き続けていたアイオリア様をも反対の腕でキャッチし、見事に二匹共、捕まえてしまった。
アフロディーテ様の両手に首根っこを掴まれて、ブラブラとぶら下がる猫ちゃん二匹。


「という事は、コッチはアイオリアかい?」
「そうだ。」
「で、どうしてコイツ等が私に襲い掛かるんだ? それより、何でまた猫になっている?」
「……オマエがヤったンじゃねぇのか?」


私が慌ててアフロディーテ様の手から猫ちゃん達を受け取ると、彼はフンと鼻を軽く鳴らしてソファーへと腰を落とした。
何故、私がそのような事をしなければならないのだとでも言いたげに、小さく肩を竦めて。
シュラ様とアイオリア様は、私の腕の中で大人しくはなったけれど、フシューフシューと荒い鼻息を漏らしている。


「では聞くが、私が何故、コヤツ等を猫にしなければならないのだ?」
「実験だろ〜。猫化薬作りに目覚めたんじゃないのか?」
「黄金聖闘士が猫になったところで、良い事は何もないだろう。寧ろ、彼等の分の仕事が私に割り振られて、面倒なだけだ。」


確かに。
アフロディーテ様は頻繁に薔薇毒由来の怪しげな薬を配合はしているけれど、彼にとって無意味な薬は作らない。
前回の猫化薬だって、い、淫乱になる薬を作るつもりで、何故か猫化薬になってしまっただけで。
あ、でも、前回と同じく、違う薬を作ったつもりが、猫化の薬になってしまったとか。


「暫く薔薇毒から薬は作っていないよ。」
「じゃあ、何なンだよ、一体。」


呆れと困惑の入り混じった溜息を吐くデスマスク様を余所に、腰を上げて私の方へと近付くアフロディーテ様。
そして、ちょっと良く見せてくれないかと言って、腕の中の猫ちゃん達の顔をジーッと覗き込んだ。





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