「ミミャア……。」
「何? 落ち込ンでンの、オマエ?」
「ミャー。」


スーパーポジティブシンキングのシュラ様にしては珍しい。
この件がアフロディーテ様の仕組んだ事だとすれば、薬が遅効性に改良されていようが、彼から与えられる物に関して警戒していようが、警戒していまいが、結果的に同じ轍を踏んでしまったのが情けないようだった。
天然・無警戒なシュラ様といえど、彼は黄金聖闘士ですからね。
二度も同じ手に引っ掛かったとあっては、面目丸潰れですよね。


「オマエでもしおらしくなる事もあンだな。珍しいこって。」
「ミャーン。」


わしわしわしわし。
デスマスク様が少々乱暴に、シュラ様の小さな頭を撫で回した。
僅かながらに迷惑さを浮かべ、目を細めたシュラ様だが、反発もせずにされるが儘になっている。
猫の姿だからなのか、慰められる事を素直に受け止められるようだ。


「ミミャ……。」
「すっかりデスマスクに手懐けられたな、猫シュラは。」
「シュラ様は単純ですから。デスマスク様の手に掛かれば、ざっとこんなものでしょう。」
「デスマスク、侮れない奴め……。」


小声で話すミロ様と私の視線の先には、シュラ様を膝に乗せ、その身体を撫で撫でするデスマスク様の姿。
いつの間にやら、膝の上に伏せ、頭から背中、お尻へとゆっくり撫でられて、シュラ様は目を細めてゴロゴロと喉まで鳴らしている。
そのままデスマスク様の巧みな手によって、夢の世界へまっしぐら……。


「アイオリア〜。お前も夢の世界に旅立ってみるか〜。俺の手で。」
「ミッ?!」
「なぁにビビってんだよ。お前も直ぐに、ああなれるって。なぁ、アンヌ。」
「ミッ、ミー!」


ソロソロと迫るミロ様の手。
それを断固拒否するアイオリア様は、必死に私の身体にしがみつく。
彼をミロ様に渡してしまうのは簡単だけれど、これだけ必死に抵抗している姿を見てしまうと、ちょっと躊躇う。


「良いだろ〜。俺にも可愛がらせてくれよ〜。最初はあんなに嬉しそうに飛び付いてきたじゃん。」
「う〜ん。マタタビ族の力が失せてないなら、そんなに嫌がる必要もないんじゃないですか、アイオリア様?」
「ミミッ?!」


ジタジタバタバタ!
手足を振り回し暴れるアイオリア様を、ミロ様の胸に押し付ける。
上下にバタつかせた手足にミロ様の長い髪が絡まってしまったが、ミロ様がガッチリとキャッチしてくれたお陰で、それ以上、酷い事にならずに済んだ。
しかも、あんなに拒否していた筈なのに、ミロ様に抱っこされた瞬間にゴロゴロと喉を鳴らして擦り寄り始めたのだから、マタタビ族のパワー恐るべしだ。


「ゴロゴロゴロ……。」
「何だよ。これじゃ、撫でる必要もないじゃないか。」
「猫フェロモンでも出ているのでしょうかね、ミロ様の身体から。それにしても物凄い威力ですねぇ。」


とはいえ、光景としては、とんでもないものではあるけれども。
ガッチリ体型のデスマスク様とミロ様の膝の上で、ゴロゴロと喉を鳴らして彼等に擦り寄る猫シュラ様と猫アイオリア様。
う〜ん、ちょっとだけ嫉妬?
二人の膝の上から、二匹の猫ちゃん達を引っ剥がしたい気分がムンムンと……。


――バーンッ!


「相変わらず賑やかだな、ココは。」
「アフロディーテ様!」
「やぁ、アンヌ。」
「おう、アフロディーテ。やっと来たかよ……。」


乱暴にドアが開けられた音に続いて、颯爽と現れたアフロディーテ様。
バックに咲き乱れるバラを背負っていてもおかしくないくらいのゴージャスさは変わらないが、その頭の上に傍目にもそれと分かる大きな瘤が出来ていた。
痛々しいというよりは、見て見ぬ振りをすべきかと悩んでしまう程に巨大なタンコブだ。
取り敢えず、気付いていない振りをしようと決めたのは良いものの、あまりの瘤の巨大さに、ついつい視線がソチラに向いてしまう私だった。





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