5.原因を探れ!



ぐりぐりぐり……。
嫌がるアイオリア様が小さな頭を左右に振るが、執拗に眉間を抉るデスマスク様の人差し指攻撃が緩まる気配はない。


「ミ、ミイィィ……。」
「デスマスク様。アイオリア様が嫌がっていますけれど。」
「当然だろ。嫌がるようにやってンだから。」
「シュラ様になら兎も角、アイオリア様へ嫌がらせするなんて可哀想です。」
「ミギャッ?!」


自分になら兎も角という言葉を聞いて、抗議の鳴き声を上げるシュラ様。
だが、その鳴き声で返って墓穴を掘ってしまった。
ギロッと鋭いデスマスク様の視線が、アイオリア様から横のシュラ様に向き、攻撃の手(いや指か?)も、そちらへと移る。
弱点のお耳引っ張り攻撃に続き、眉間グリグリ攻撃までも受けて、ミニャミニャと嫌がる声を上げ、顔を左右に振るシュラ様。
その嫌そうな素振りを見ていて、流石に可哀想になり、腕の中から離して上げる。


「ミミャッ!」
「あ〜、うっせぇなぁ、オマエは。ンな事しても、痛くも痒くもねぇンだよ。」


ソファーの下へと下りた途端、デスマスク様の足首に向かってガリガリと爪を立てるシュラ様。
それを呆れた表情で見下ろしたデスマスク様が、いとも簡単にヒョイと首根っこを摘み上げ、そのまま自分の腕の中にシッカリと抱っこしてしまった。
聖闘士の強靱な腕の中に捕らえられてしまえば、小さい猫の身体のシュラ様には抵抗しようがない。
遂に観念して、その腕の中でダランと力を抜き、シュラ様は大人しくなった。
思い切り不服そうな不満顔ではあるけれども。


「で、アンヌ。なンの話だったっけか?」
「猫化の調査報告です。何か分かりましたか?」
「それなぁ……。」


デスマスク様は十二宮を中心に、その周辺まで聞き込みをしてきたそうなのだが、これと言った情報は何も掴めなかったと肩を竦めた。
アフロディーテ様の次に怪しいと思われていたムウ様は、貴鬼君を連れて三日前からジャミールに帰省中。
他に猫化の現象は何処にも起きてはおらず、前回の時と同じく、シュラ様とアイオリア様だけが、このような悪夢に襲われたのだ。


「やっぱアフロディーテだろ、これ。シュラとアイオリアだけってトコがさ。ピンポイントで狙ったっぽいし。」
「でも、どうやって? 昨日は、お二人共にアフロディーテ様とは接触していないのでしょう?」


そこなンだよなぁ。
首を傾げる私を見遣り、片手で銀の髪を掻き毟りながらデスマスク様がソファーに腰を下ろした。
片方の手には、シッカリとシュラ様を抱いたままだ。
余程、信用がないんですね。
離してしまったならば、何をし出すか分からないシュラ様だから。


「あれからアフロディーテが研究を重ねて、あの猫化薬を改良したって事もあるんじゃないのか。」
「改良? どんなだ?」
「速効性だったのを、遅効性にしたとかさ。」
「遅効性にして、何のメリットがあンだよ?」
「効き目が遅かったら、自分に疑いが掛からないだろ。」


いやいやいや。
効き目が速かろうが遅かろうが、シュラ様たちが猫に変化したら、真っ先に疑われるのがアフロディーテ様ですし。
今更、薬を遅効性に改良したところで、全く意味はないでしょう。


「だよなぁ……。」
「オマエ、分かってて言ったのかよ。」
「ある程度の可能性くらいはあるだろ〜。」


暢気に間延びするミロ様の声に、呆れでガックリと項垂れるデスマスク様。
それに釣られてか、彼の腕の中のシュラ様までもが、同じく項垂れてみせた。





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