「それで、デスマスク様。報告の方は、どうだったのですか?」
「あ〜……。」


癒しを求めてなのか、自分が遊びたいからなのか。
ミロ様から猫じゃらしを一本奪うと、黒猫姿のシュラ様に向けて、右に左にと揺さ振るデスマスク様。
私の言葉は右から左。


「ほれほれ。アイオリア、こっちだぞ。」
「ミイィィィッ。」
「オラッ。飛べ、シュラ。」
「ミャーン。」
「可愛いなぁ、可愛いなぁ。」
「ゴロゴロゴロ……。」


アイオリア様と猫じゃらしで遊ぶミロ様。
シュラ様にネズミ人形をプラプラけしかけて遊ぶデスマスク様。
腕に抱っこしたカプリコちゃんの可愛さにメロメロなアイオロス様。
この部屋の雰囲気といい、この部屋に居る人達といい、スッカリ猫ちゃんの可愛さに毒されている。
このままじゃ、駄目駄目聖闘士が出来上がってしまう。
しかも、三人も。


――バンッ!


「もうっ! 三人ともイイ加減にしてください!」
「わっ?!」
「うおっ?!」
「おおっと?!」


殊更に強くテーブルを叩き、このダランとした空気を壊そうと試みた。
そして、それは見事に成功したようで、まったり猫空気にドップリとハマり込んでいた三人が、ビクリと慌てて背筋を伸ばす。
ついでに、猫ちゃん達もピンと背を伸ばした。


「話が先に進まないようなら、これ以上、猫ちゃん達と戯れるのは禁止します! シュラ様、アイオリア様、カプリコちゃん! こちらにいらっしゃい!」
「ミャッ!」
「ミィッ!」
「ミャーン。」


――ダダダダダッ!


「はいはい、良い子ちゃんですねぇ。シュラ様も、アイオリア様も、カプリコちゃんも。」
「ミャーン、ゴロゴロゴロ……。」
「な、何故、皆、アンヌのトコに行ってしまうんだぁ?!」
「それは普段の行いの違いでしょうね、確実に。」


可愛い猫ちゃん三匹を周りに侍らせて勝ち誇る私。
そして、その前にはガックリと膝を折って項垂れる黄金聖闘士三人。
しかも、その内の一人は滝のように涙を流す教皇補佐ときたものだから、色々と有り得ない光景ではある。


「ミャミャミャン。」
「はいはい、シュラ様は本当に可愛いですねぇ。抱っこして差し上げます。」
「ミャーン、ゴロゴロ……。」
「アイオリア様とカプリコちゃんは、キャットタワーで遊んでいてくださいね。」
「ミイィッ。」


空いていた左腕でアイオリア様を抱き上げ、私の背後に聳え立つキャットタワーの真ん中に下ろす。
次いで、カプリコちゃんも。
二匹はスルリスルリとタワーを上り始め、アイオリア様に至っては、本棚の上へと続くお気に入りの渡し板の真ん中に陣取り、コチラの様子を上から見下ろして御満悦の様子。
一方のシュラ様はというと、私が他に気を取られているのを良い事に、その小さい頭を思い切り谷間に突っ込んで、グリグリと潜るように顔を擦り付けている。
ちょっと油断すると、直ぐこうなんだから、もう!


「プハッ。」
「ぷは、じゃありません。何をなさっているのですか、シュラ様。」
「ミャ?」
「可愛くとぼけても駄目です。」
「……エロ猫だ。」
「ただのエロ猫じゃねぇ。ありゃ、ムッツリエロ猫だ。」
「ミミャッ!」


それは「はい。」と返事をしているんですか、シュラ様?
認めるんですか、自分がムッツリだと。


「兎に角! ちゃんと報告が済むまで、そして、ちゃんと対策を立てるまで、猫ちゃん達と遊ぶのも、触れ合うのも禁止です! 良いですね?」
「え〜……。」
「アイオロス様。何か御意見でも?」
「いや、何も……。」
「ミャミャン。」
「シュラ様は胸グリグリ禁止です。」
「ミギャー!」


両手で掴んだシュラ様の身体を、腕を伸ばして自分の身体から引き離す。
ブラリと宙に浮いた身体をバタバタと捩らせるものの、小さな猫の姿では、到底、私に勝てる筈もなかった。





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