「ミャーミャミャミャ、ミャミャ、ミャン。」
「アンヌ、シュラが何か言っているようだが……。」
「どうせ、アレだろ。オッパイにグリグリさせろとか言ってンだろ。」
「デスマスク様。そのような事を仰る前に、キチッと報告をすべきじゃないですか? シュラ様の事は放っておいても良いのですから。」
チッと大きな舌打ちの後に、渋々ながら報告を始めるデスマスク様。
シュラ様とアイオリア様が再び猫になってしまったと聞いて、サガ様が頭を抱えた事。
アイオロス様が磨羯宮からガンとして動かないと聞いて、サガ様が更に頭を抱えた事。
取り敢えず、執務と任務の人数は足りているので、暫くは何とかなるだろうという事。
「執務の方はサガの他にムウとアルデバランがいたから、そこのアホ教皇補佐がいなくても、ま、大丈夫だろう。シュラとアイオリアの今日の割り当ては聖闘士候補生の指導で、そっちは自主鍛錬に変えるか、白銀に行ってもらうかで対応するそうだ。」
「ま〜た、サガの胃痛が酷くなりそうだなぁ。」
「誰のせいだと思ってるんだよ、ロスにぃ。」
呆れの溜息を吐くミロ様だが、そういう彼もココに居座っている時点で、アイオロス様と何ら変わりないのだと、自分では気付いていないのだろう。
溜息を吐きたいのは私だが、それをグッと喉の奥に飲み込む。
「んで、俺達はアフロディーテの回復を待って、猫化の原因を探れだとよ。」
「シュラ様とアイオリア様がいない分、人手も足りないですしね。私達で何とかしなさいという事ですか。」
「ちなみに、ココに戻ってくる途中、双魚宮に寄ったンだが、アイツ、まだ気ぃ失ったままだったンで、ベッドに寝かせておいた。ありゃ、もう暫くは目覚めンだろうな。」
何だかんだで良い人ですね、デスマスク様。
アイオロス様が返り討ちにして放置してきたアフロディーテ様を、ベッドまで運んで看病(とまでは言えないけれど)してあげるだなんて。
これがシュラ様だったら、見て見ぬ振りしてスルーしそう、絶対に。
「つっても、サガはアフロディーテの可能性は低いと思ってるようだったがな。」
「どうしてです?」
「同じ薬を、同じ相手に二度も盛る必要はねぇだろってな。同じ薬を盛るなら、別の相手にするだろうし。同じ相手に盛るなら、別の薬を使うだろ。」
「そうだよなぁ、確かに……。」
ウンウンと納得するミロ様と私。
だが、そんな私達を後目に、アイオロス様だけは納得がいかないとばかりに頭を横に傾げている。
彼は、同じ相手に同じ薬を盛る意味があるとでも思っているのだろうか。
「いや、同じ相手に同じ薬は盛らないと俺も思うよ。でも、違う薬を盛った可能性は捨てられないだろう。たまたま現れた効果が、前と同じだっただけで。」
「っ?!」
「違う薬で、同じ効き目……。」
「そう。アフロディーテが新しく開発し、二人を実験材料にしたのは、猫化の薬じゃなかったのかもよ。そもそも前の薬だって、猫になる薬じゃなかっただろう? 確か、淫乱薬か何かじゃなかったかな。ね、アンヌ。」
確かに……。
前回の『アレ』も猫化薬ではなかった。
え、エッチな気分になる薬を作った筈が、猫になってしまうという大失敗作だったのだ。
同じ失敗が、また今回も起こってしまったのだとすれば、アフロディーテ様の可能性も捨てられない。
「シュラ様、アフロディーテ様から何か食べ物か、飲み物か、頂いたりしました?」
「ミャミャン。」
だが、シュラ様は、その小さな頭をブンブンと左右に振る。
一体、何が本当の事なのか。
分からずに混乱は深まるばかりだ。
→第4話へ続く